2003年5月16日

「食品安全基本法」の採択に対する声明

食の安全・監視市民委員会
代表 神山美智子

 2002年4月2日の「BSE問題調査検討委員会」の報告により、政府は食品安全行政の抜本的な改革が求められ、昨年来「食品安全基本法」「食品安全委員会」が課題となり、このたび国会で「食品安全基本法」が成立しました。私たち「食の安全・監視市民委員会」では以下のように、この法案の審議状況とあわせてその内容は多くの問題があると考えます。とりわけこの法律の第3章に成文化された「食品安全委員会」の抜本的見直しが必要です。今後の食品安全行政においては私たち市民の望む制度・人事・施策を求めます。

(1)第一に、国会審議が極めて不十分であったことを指摘しなければならない。衆議院・参議院それぞれにおいて内閣委員会での審議が短期間に行われたにすぎず、参考人質疑各3時間あまり、農水委員会委員と厚生労働委員会委員との連合審査が各1回という不十分なものであった。食の安全の基本法という法律の重要性を鑑みれば「特別委員会」を設置し、全国での公聴会も開くなど、十分な審議を行う必要があった。

(2)第1章「総則」では「消費者の役割」でなく「消費者の安全・健康を求める権利」を規定すべきである。

(3)第2章「施策の策定に係る基本的な方針」において、「食品健康影響評価」(法11条)が規定されている。この評価は「その時点において到達されている水準の科学的知見に基づいて」行われるとするのでは不十分である。「予防原則に基づいた安全性評価」の考え方が基本におかれる必要があり、とりわけ、新規食品などに関する安全性評価においては、開発者の安全性の証明と徹底したデータ開示が必要である。少しでも安全性に疑問が提示された場合には、まず結論を凍結した上で、関係者間の徹底した議論がなされる必要がある。

(4)「情報及び意見の交換の促進」(第13条)はリスクコミュニケーションの徹底が必要である。これは、政府や評価機関による情報提供といった一方的なものであってはならない。また条文にある「施策について意見を述べる機会の付与」「意見交換」をするためにのみ位置づけられるのではなく、私たちの意見が反映される場として位置づけられるべきである。そのような双方向性を有するリスクコミュニケーションを制度として担保すべきである。そのため、消費者の申し出制度を新設し、措置請求権を保障すべきである。

(5)第3章「食品安全委員会」
 1.この委員会は業務として「食品健康影響評価」を行い、「食品の安全性確保のための施策を内閣総理大臣を通じて関係各大臣に勧告」し、「施策の実施状況を監視・勧告」(第23条)する、とある。また「関係者相互間の情報及び意の交換を企画・実施すること」(第23条)とする。こうしたリスク評価、リスクコミュニケーションを行うにあたっては、その目的が達成されるように、安全性を求める権利を有する消費者も参加して、評価対象の選定、リスク管理部門への強い監督・監視を行わなければならない。

 2.そのためには、食品安全委員会は担当大臣を置くことなく、公正取引委員会のように独立した機関となるべきである。
 3.その権限は「関係行政機関の長に対して、資料の提出、意見の表明、説明その他必要な協力を求めること」(第25条)以上に、強力な指導・勧告の権限をもたせる必要がある。

 4.委員は7名(第28条)で、科学者を中心に構成されようとしているが、企画、安全性評価、行政監視など重要な業務を行うためにはEUに見られるように科学者以外が委員長となり、委員には消費者、生産者、事業者、研究者を入れた総合的なものとする必要がある。そのため常勤の委員をもっと多くすべきである。

 5.委員の人選については「両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命する」(第29条)とある。人選の透明性を確保するためには、消費者、生産者、事業者、など関係団体からの推薦者リストを作成し、選考基準・選考過程を透明にし、公募制を取り入れるなど行政からの独立性を確保するための工夫を行うべきである。

 6.「専門委員」(第36条)の人選にあたっては、リスク評価機関として本委員会の独立性を確保するために、既存の省庁の審議会委員を兼務させるべきではない。また人選においては、関係団体の推薦に基づく公募制をとり入れ、選考基準、選考過程を公表すべきである。

 7.「事務局」(第37条)事務局長および事務局スタッフは、意欲ある者を公募制により選出することとし、事務局長は行政機関出身者以外とすべきである。スタッフは民間からの起用も含める。

(6)今後の課題
 安全な食品は、自然環境を基盤とし、農薬、化学肥料、飼料添加物、動物用医薬品など食品の安全性に影響を及ぼすおそれのあるものを生産段階から避け、放射線照射、遺伝子組み換え技術を使わないで、自然環境と調和した農林水産業によってつくられるという基本的認識を明らかにすべきである。そのような認識に基づき、有機農業・環境保全型農業をいっそう推進する施策が講じられなければならない。そのため、「有機農業振興基本法」の創設や、関連する農薬取締法を改正して、農薬の定義の見直しや有機農業側から包括的に有機農業関係の防除資材等を適用除外するなどの対策が課題となっている。
 また、食の安全に関して多くの問題を引き起こしている輸入食品についても、関連する食品衛生法を改正して、輸入監視の強化などを図るべきである。同時に、食の安全性に影響を及ぼすおそれがある生産資材、食品、食品添加物などを総量として削減していく施策を総合的かつ計画的に推進することが必要である。
 さらに、「安定性のある食システムの確立」、「食料自給率の向上、地産地消の推進」、「食文化の継承と創造」、「環境にやさしく持続可能な食」など、農と食のあり方への視野をもった総合的な施策への発展をめざすべきである。

連絡先  東京都新宿区早稲田町75 日研ビル2階
日本消費者連盟気付「食の安全・監視市民委員会」事務局
電話03(5155)4765・Fax03(5155)4767

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