2007年9月28日

内閣府食品安全委員会事務局評価課内
「添加物の食品健康影響評価」意見募集担当御中



〒162-0042 東京都新宿区早稲田町75
日研ビル2階 日本消費者連盟気付
電話 03-5155-4765
食の安全・監視市民委員会
代表 神山 美智子

ナイシンに係る食品健康影響評価についての意見


1 はじめに
 食品安全委員会の行う食品健康影響評価は、単に定性的なリスク評価ではなく、定量的な科学的評価を行うこととなっているはずである。
 しかし、ナイシンに係る食品健康影響評価は、到底科学的・定量的評価とは言えない。以下にいくつかの例を挙げる(アンダーラインは筆者)。
 要約(2頁)
  現時点で得られている知見から判断して、添加物として適切に使用される場合にあっては、耐性菌出現による医療上の問題を生じる可能性は極めて少ないと考えられる
  耐性菌出現により有効性等に影響を及ぼすことがないよう十分な配慮が必要と考えられる。
安全性
(5頁)
ナイシン様抗生物質産生菌は、頻度が低いが、ヒト及びウシの腸内や鼻腔内に常在していることから、ナイシンが腸まで到達したとしても、腸内細菌叢のバランスを崩す可能性は低いと考えられる。
 (6頁)
  バクテリオシン耐性が抗生物質に対して交差耐性を示す可能性は極めて低いと考えられている。
  ナイシンは、その化学構造、物性、作用機序、交差耐性、消化酵素による影響などから、一般に言われる抗生物質又は抗菌物質とは異なる範疇の物質と言える。海外における使用経験からも特段問題となる報告はなく、食品添加物として使用しても、ヒト腸内細菌をはじめとする各菌種に影響を与える可能性は極めて低いと考えられる。

2 ADIの設定について
  ナイシンのNOAELの最小量は、ラット3世代繁殖毒性試験の1.0%(12.5mg/kg体重/日相当)と考えられることから、安全係数を100とし、ナイシンの一日摂取許容量(ADI)を0.13mg/kg体重/日と設定している(2頁)。
  これに対し、JECFAでは、1968年に、ラット2年間慢性毒性試験の結果よりラットにおけるNOAELを最高用量の3,330,000U/kgとして、ADIは33,000U/kgと設定したが、原著論文によるとこの値は飼料中の濃度である。ヒト体重あたり、かつmg単位に換算すると、NAOELは4,16mg/kg体重/日に相当し、ADIは0.042mg/kg体重/日となる。
  また米国FDAでは、1984年に、JECFAが評価に用いたラット2年間慢性毒性試験の結果により、ナイシンのADIを2.9mg/ヒト/日と設定した旨公表しており、これは60kg換算で、0,049mg/kg体重/日となる。
  とされているので、安全性評価において「海外における使用経験からも特段問題となる報告はなく」と海外での使用経験を評価材料としている以上、JECFA及び米国FDAの評価結果にならい、ADIを 0.042mg/kg体重/日〜0,049mg/kg体重/日と設定すべきである。
  本添加物が米国やEUに比し、はるかに多種多様な食品への使用を前提として評価される以上、JECFAや米国FDAの設定したADIより一桁大きいADIを設定することは非科学的である。


3 耐性菌出現のおそれについて
  上記1で述べたように、本評価において「現時点で得られている知見から判断して、添加物として適切に使用される場合にあっては、耐性菌出現による医療上の問題を生じる可能性は極めて少ないと考えられる。」「耐性菌出現により有効性等に影響を及ぼすことがないよう十分な配慮が必要と考えられる。」とされ、耐性菌出現のおそれは完全には否定されていない。また「海外における使用経験からも特段問題となる報告はなく」とされているが、海外での使用は「50ヵ国以上で保存料として、チーズ、乳製品、缶詰等に使用されている」に過ぎない。これに対しわが国で指定された場合の使用予定食品は、
 アイスクリーム類、乳飲料、ホイップクリーム、チーズから、生菓子、フラワーペースト類、洋菓子、ハム、ソーセージ類、たれ、つゆ、ドレッシング、豆腐、卵加工品、味噌、麹、魚介乾製品、魚肉練り製品、いくら、すじこ、たらこ、辛明太子、かずのこ調味加工品となっており、海外50ヵ国の比ではない。日本人が毎日のように摂取する豆腐、味噌、麹、魚介乾製品、魚肉練り製品、いくら、すじこ、たらこ、辛明太子、かずのこまで、幅広い多種多様な食品に使用した場合には、ナイシンと細菌類とが日常的に接触することになるので、耐性菌出現のおそれと頻度は飛躍的に増大する。

  ナイシンは非常に抗菌活性の高い物質であって、34個のアミノ酸のうち1個が違うナイシンZ(本評価のナイシンはナイシンA)を含む保存料ラクティスエイドを調味料であるとして、違法に製造販売した企業があり、厚生労働省において、ラクティスエイドの抗菌活性テストを実施したことがあるが、非常に高い抗菌活性を示したため、単なる調味料ではなく添加物(保存料)であるとして使用販売を差し止めた事例がある。
  このように抗菌活性の高い抗菌ペプチドを、上記のような多種多様な食品に使用させることは、国民の健康への悪影響を未然に防止すべき食品安全基本法に反し、食品安全委員会の責務に反している。


 添付資料
 1 ラクティスエイドの取締を求める申入書
 2 厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課長通知


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