11FSCW第23号
2011年10月13日


厚生労働大臣 小宮山洋子様
農林水産大臣 鹿野道彦様
文部科学大臣 中川正春様
消費者問題担当大臣 山岡賢次様

食の安全・監視市民委員会
代表 神山美智子


放射能汚染から食の安全を守るための意見書

 3.11福島第1原発事故に伴い環境に放出された大量の放射能によって、広く東日本産の飲食物が汚染されることになったが、それらに対するその後の管理監視体制が不十分で、我々消費者・国民の日々の食卓に放射線汚染が広がりつつある。事故後半年を経過しても、事故直後の短い期間にのみ適用すべき緊急対応だったはずの暫定規制値が、高い値のまま未だに改訂されずに放置され、昨今ではそれを下回れば安全であるかのごとき誤った言説が巷間に流布されている。特に、放射能被ばくに対して大きく影響を受ける妊婦(胎児)・子ども・青年・若者は、危険な状態が続いている。

また、飲食に係る放射能汚染の測定態勢すら十分に整備されず、そのための十分な予算も用意されず、穴だらけの検査体制下で、放射能汚染食品が食品流通へ入り込んでくることが懸念されている。たとえば放射性セシウムに汚染された牛肉が広く出回り、それが学校給食などに利用された後で事後的に判明するなど、消費者・国民の不安は増すばかりである。飲食の放射能汚染対策については行政が後手に回ることで、今や国産食品への消費者・国民の信頼は大きく低下した。

 こうした事態は抜本的に改善されなければならない。農林水産生鮮品をはじめ、国産飲食品への消費者・国民の信頼を再び回復し、食卓から危険な放射能汚染を一掃するとともに、東日本大震災や原発震災で疲弊するわが国農林水産業の再生・復興と食料自給率回復を図るため、以下の事項を政府に要請する。政府は、十分な財政的裏付けと人的体制を伴う形で、下記要請事項の早急な実現に取組んでいただきたい。




1. 規制値を下げるとともに法的根拠のある基準とする
(1) 規制値を1/10以下へ引き下げる(1年間の総被爆限度線量1ミリシーベルトのうち、飲食からの内部被爆限度を0.5ミリシーベルト/年以下とすべきであると考える)。
(2) 主食の米については、一般食品と比較してより厳しい規制値とする。
(3) 放射能被ばくにセンシティブな世代(妊婦(胎児)・子ども・青年・若者)への規制値は、更にそれ以下に大きく下げる。
(4) 規制対象の放射性核種を増やす(福島第1原発から環境へ放出された放射性核種をすべて明らかにする(核種名、推定放出量、特性等)、ストロンチウム等のβ核種、プルトニウムやウラン等のα核種の規制値も必要不可欠)。
(5) 放射線の規制値を食品衛生法11条に基づく規格基準とする。



2. 放射能測定の拡充
(1) 高レベル測定機器類の開発(高速に正確に大量に検査)(*注)
(2) 同上の測定機器類の大量導入(そのための自治体支援、民間測定会社支援)
(3) 測定対象の放射性核種を増やす(上記1.(3)に対応)。
(4) 放射能汚染の懸念がある地域(17都県)産品は全量(または全ロット)検査を原則とする。空間線量、土壌への蓄積線量の高い地域の産品は優先的に測定する。
(5) 測定に関する情報を全て公開する(測定の際の前提条件や段取り(**注)、測定結果等)。
(6) 検出限界を下げる(NDを使って汚染を小さく見せるための小細工をやめる)。
(7) 出荷制限と摂取制限は原則として同時発令・解除とする(現状は出荷制限と摂取制限は一致していない)。また、出荷制限・摂取制限の解除は現行よりももっと慎重なルールで対応すべきである。

*注:児玉龍彦『内部被曝の真実』(幻冬舎新書)より
「ゲルマニウム・カウンターというのではなしに、今日ではもっと高性能の、半導体を用いたイメージング・ベースの測定器(注:放射線を画像として写せる機械)が、はるかにたくさん開発されています。なぜ政府はそれを全面的に応用してやろうとして、全国で機械を作るためにお金を使わないのか。」

**注:「測定の際の前提条件や段取り」
例えば、サンプル数、サンプルの取り方(牛肉なら部位はどこか等々)、測定器名、測定する際にサンプルをどうしたか(何度も洗浄した、内臓や骨を捨てた、外部線量測定器でチェックして放射能のなさそうなところを選んだ等)、検出限界、測定時間(短い時間で測定すると検出限界値は大きくなり、逆に長い時間で測定すると検出限界値は小さくなる)、誰が測定したか(機関名・測定責任者名)、測定日時・場所、その他、測定が適正・公正であることを証するであろうすべての情報



3. 放射能測定体制の抜本的拡充
(1) 放射能検査充実のための十分な予算の確保
(2) 自治体間の測定頻度のバラツキをなくすため、国は放射能測定器を無償で各自治体に十分な量で配置する。
(3) 放射能測定要員の抜本的拡充とスキルアップ研修等人員養成
(4) 放射能測定機器類のレベルアップのための研究開発の政策的奨励(注*)
(5) 飲料・食料の放射能汚染の源となる環境の放射能汚染状況を把握するため、詳細な農地・牧草地の土壌汚染マップ、海洋汚染マップ、森林・湖沼・河川汚染マップの作成と、放射線検査や出荷制限と汚染マップとのリンク
(6) 更に、森林・海洋の各生態系、及び地下水を含む地域水源の放射能汚染に係る中長期的なモニタリング体制の確立(国際的な科学者の協力受入れ)
(7) 放射能測定体制における「利益相反」の徹底排除(放射能測定機能を、原子力推進や産業振興を担う省庁である文部科学省・経済産業省、及びその外郭団体などから切り離す)
(8) 放射能測定状況の定期的外部監査


*注:たとえば農林水産技術会議(農林水産省)「放射性物質に関する緊急対応研究課題」の中に「高速・高性能の飲食品放射能汚染測定器の開発」を入れ、広く民間から募集する。(同上URL:http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/110916.htm



4. 食品流通の正常化(フード・ロンダリング防止)
(1) 放射能検査結果の表示(原則ロット単位で検査の上、その結果を全部公開)(*)
(2) 汚染食品が発見された場合の、国の責任による機動的な出荷制限・摂取制限の発令(原則、両者は同時発令)、及び既に流通してしまったものの回収指示、逆に制限解除の際には、現下ルール以上の慎重な対応
(3) 虚偽表示の撲滅(抑止力効果のため、監視体制の抜本的強化と罰則強化、罰則強化は経済罰を中心とし、特別法を制定(「みなし不当利益」の没収と、その数倍の罰金)
(4) 生鮮食品の原産地表示の精密化(水産物については漁獲水域に限る等)
(5) 加工食品・外食における原料原産地表示の原則義務化
(6) 食の安全管理体制の抜本的見直し(特に産業振興省庁である厚生労働省・農林水産省を、食の安全管理業務から切り離す、食品安全委員会・消費者委員会・消費者庁のあり方見直し等)
(7) 食に関する放射線管理関連法の改正(例:汚染食材の非汚染食材への混入による希薄化を「放射線障害防止法」違反(厳罰)とする法改正(牛乳、米等)等)

(*)ロット検査は、生鮮品であれば同一地区で同時期に産出されたものを過大な量でない範囲でロット化し抽出検査する、加工品であれば、同一工場で同一日に生産されたものを過大な量でない範囲でロット化して抽出検査する。



5. その他
(1) 規制値や放射能検査体制を厳しくすることに伴う当面の出荷停止増加に対しては、ダメージを受ける生産者・農家・漁業者や食品関連産業等への万全の賠償・補償を用意し、併せて経営再建のための支援を充実させること
(2) 高濃度の放射能汚染地域からの(生産者・農家・漁業者や食品関連事業者を含む)住民の一刻も早い避難を実現する。特に、生産者・農家・漁業者の場合には、集落丸ごとの移転を移転先自治体などとも協力して政策的に支援し、移転先での営農や漁業再生が成功裏に展開できるよう、生活補償も含めて万全の措置をとること。また、中低レベルの汚染地域では、住民に「避難する権利」・「除染を受ける権利」を認め、高濃度地域の住民と等しく賠償・補償・再建支援がなされなくてはならない。(*注)
(3) 恒常的な低線量内部被ばくの危険性を広く国民に周知徹底する。逆に、飲食からの放射能被ばくについての一部科学者等による軽率な発言に対して、政府等の公的役職からの解任など、適切な対応を行うべきである。(**注)
(4) 放射能に汚染された土、汚泥、肥料、家畜糞尿、農林水産ゴミなどは、残留放射能の数値が小さくても全国に拡散することを止める(移動禁止)。また、汚染度の高いものの管理・監視を厳格化し、環境に漏れ出て二次被害を起こさないための対策を強化すること
(5) 更に、キノコ生産資材用のおが粉及びキノコ原木(ほだ木を含む)については、キノコの放射能を濃縮しやすい性質に鑑み、十分に低い規制値またはゼロ値を設定し、全国に放射能汚染を広げることを未然に防止すること
(6) 上記に伴う全ての追加的費用は、事故原因者であり汚染者であり加害者でもある東京電力に負担させること
(7) 各省庁が策定して公表している下記の一般向けパンフレットは、放射能汚染や放射能被曝の危険性について、軽視、過小評価、あるいは歪曲するものであり、広く消費者・国民の誤解を招きかねないので直ちに撤回すること。
1 消費者庁「食品と放射能Q&A」
2 厚生労働省「妊娠中の方、小さなお子さんをもつお母さんの放射線へのご心配にお答えします:水と空気と食べものの安心のために」
3 文部科学省「放射能を正しく理解するために――教育現場の皆様へ」


(*注)高レベル汚染、中低レベル汚染
 放射線管理区域指定となる5.2ミリシーベルト/年(0.6マイクロシーベルト/時)以上の汚染地域からは「原則避難」、放射線障害防止法の定める一般人の年間被ばく限度1ミリシーベルト/年〜5.2ミリシーベルト/年の地域は「避難する権利」「除染を受ける権利」を認める。いずれの場合も、万全の賠償・補償・再建支援がセットであることは言うまでもない。


(**注)恒常的な低線量内部被ばくの危険性
 恒常的な低線量内部被ばくは、ガンや白血病に至るだけでなく、免疫不全、循環器系不全、ぜんそく、各種臓器不全、恒常的な疲労感、頭痛・筋肉痛、生殖異常、早期の老化、神経系及び脳への悪影響、虚弱体質化等々、人体に様々な悪影響を及ぼし、健康を奪うと言われている。


以上


<連絡先> 食の安全・監視市民委員会事務局 
〒169-0051 東京都新宿区西早稲田1-9-19-207
日本消費者連盟内
Tel:03(5155)4765 Fax:03(5155)4767

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