2011日消連第25号
11FSCW第26号
2011年11月10日


消費者庁長官 福嶋浩彦様
食品表示一元化検討会座長 池戸重信様


特定非営利活動法人日本消費者連盟
共同代表運営委員
天笠啓祐、古賀真子、真下俊樹、山浦康明
食の安全・監視市民委員会
代表 神山美智子
遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン
代表 天笠啓祐

食品表示法制定への提言

はじめに
消費者庁は現在、その創設の目的の一つである消費者行政の一元化に向けて「食品表示一元化検討会」を設置し、2012年度に新しい表示法を制定する準備を進めている。そこで、これまで、この問題に取り組んできた3団体から、消費者庁が担うことになる食品表示の一元化へ向けて、食品表示法(仮称)制定のための具体的な提言を行うものである。
食品表示制度は、まさに複数の法律が錯綜している、規制の不整合の代表格である。食品表示行政は各法律にまたがるバラバラ行政であり、消費者、事業者にとって非常に分かりにくい分野である。目的が各々異なる法律を単に横断的に調整しても改善は不可能である。法律を一元化し、分かりやすいものとすべきであると考える。
9月に始まった「食品表示一元化検討会」はすでに2回開催されているが、配布資料の中で現在の食品表示をわかりにくくしている原因の一つとして、「記載情報が多すぎること」を挙げ、またそれに同調する意見を述べる委員もいたが、消費者にとってわかりやすい食品表示とは、決して表示を簡素化することではない。消費者は、購入しようとする食品に何が使用され、その原料はどこで作られたものか、またどこで製造されているかを知りたいと考えている。つまり、消費者にとってわかりやすい表示とは、食品の実態が分かることであり、正確な情報が提供されること、である。3月11日の福島原発事故後、放射能汚染食品が問題になっているのは、まさに食品の実態、つまり正確な放射能測定値がわからないためである。食品表示の原則は、消費者の知る権利、選択の権利を保障することであるはずだが、現在の表示制度の下では消費者は選ぶ権利を奪われている。
2004年制定の消費者基本法では、「消費者の安全が確保され、商品及び役務について消費者の自立的かつ合理的な選択の機会が確保され、消費者に対して必要な情報及び教育の機会が提供され、消費者の意見が消費者政策に反映されること」など、消費者の権利が尊重されるべきであることを基本理念として明確に掲げられた。この基本法の理念に沿った食品表示制度が制定されることを期待する。

1.「食品表示法」制定の目的
食品表示は様々な法律で規制されている。飲食による衛生上の危害発生の防止のための「食品衛生法」、食品の商品選択のため情報提供としての「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)」、虚偽誇大表示を禁止する「景品表示法」、内容量等の表示に関する「計量法」、健康及び体力の維持、向上に役立てる表示としての「健康増進法」、食品に医薬品的な効果効能の表示を禁止する「薬事法」がある。
これらは各々、所管官庁も法律の目的も違い、行政処分、罰則も異なる。全ての法律を網羅しながら、商品の表示が行われているが、同じ意味でも用語が異なるなどの実態があった。
2002年、農林水産省と厚生労働省の共同開催で食品の表示に関する共同会議で審議がおこなわれるようになったものの、目的が異なる法律のもとでは、単に用語の統一といった末節の問題に留まってしまう。消費者にとっては、複数の法律を理解して日々の購買行動に反映することは、非常に困難を伴う。事業者にしても表示を実施するに当たって、煩雑であり、間違いも起こりやすいと思われる。
基準作りにあたっては、基本的な考え方の統一がなければ、情報としての内容、方法も異なってくるのは必然となる。消費者・事業者に分かりやすいものとするためには「食品表示法」を制定し、食品表示制度を一元化すべきである。
また、今回の「食品表示法」制定の目的は、単に法律を一元化して分かりやすくするということに留まるだけでは充分ではない。下記 「2.「食品表示法」の基本」や「3.食品表示充実のための具体策(当面の提案)」に書いたような、消費者の当然の権利を拡充するための具体的な表示制度の充実や、その結果としての適正表示が実際に食品流通の現場で守られ徹底されるという法の実効性が伴っていなければならない。更に、福島第1原発事故に伴う食の放射能汚染という深刻な事態に対して、新たな食品表示の法律が、消費者の安全で安心で適切な商品選択に資していけるようなものでなければならない。

2.「食品表示法」の基本
@法律の基本理念を消費者主権に置くこと
 1962年、アメリカのケネディ大統領は「消費者の利益保護に関する特別教書」で、消費者には、@安全を求める権利 A知らされる権利 B選ぶ権利 C意見を反映させる権利があるとし、権利の主体者としての消費者の位置づけを明確にした。
日本では、2004年制定の消費者基本法で、「消費者の安全が確保され、商品及び役務について消費者の自立的かつ合理的な選択の機会が確保され、消費者に対して必要な情報及び教育の機会が提供され、消費者の意見が消費者政策に反映されること」など、消費者の権利が尊重されるべきであることを基本理念として明確に掲げた。
食品表示制度は、こうした消費者主権を基本理念として、これまでの事業者重視から、消費者重視への行政に改め、消費者の権利として位置づけるべきである。

A表示基準作成に消費者の意見が反映されること
 現行の表示基準作成は各省庁の審議会等で行われるが、審議委員は行政の指定した消費者・事業者団体等の代表者などに限られ、消費者の意見が充分反映しているとはいえない。審議会委員の公募、推薦、公聴会の開催や、家庭用品品質表示法10条の主務大臣への申し出、JAS法21条の申し出制度などを参考に、消費者の申し入れ制度を導入すべきである。

B違反事業者には罰則を強化し、効果あるものとすること
JAS法を例にすると、「是正の指示」「指示に従うよう命令」の手順を踏み、それでも是正されない場合に、公表や懲役、罰金が科せられることになっていた。そのため、実際に罰金が科せられることも少なく、その金額もわずかで、予防措置としての効果は期待できない。違反した場合には、その表示を是正させるとともに、是正を命じたすべての案件につき、その事実をただちに公表し、ただちに罰則を科すべきである。
また、違反者に対しては、不当な利益とみなされた金額相当の「みなし利益」をすべて没収した上でペナルティを支払わせるなど、違反することが経済的に無意味である状態を制度的につくり、現下の「悪貨(表示)が良貨(表示)を駆逐」するような困った事態を解消すべきである。更に、バイイングパワーを大きく持つ大手小売りや大手外食、及び大手卸会社には、食品表示適正化のために一定の法的責任のある「役割分担と責任」を担わせるべきである。

C回収命令・廃棄基準を導入すること
現在、食品衛生法以外の表示違反等は、人に危害が及ばないからという理由で、回収は事業者の任意となっている。企業は広告やホームページなどで回収を呼びかけているが、どの程度回収されているのかなど、その実態は不明である。さらに回収されたものについての処理も不明である。どのような場合に回収や廃棄を命じるのかについての基準を定めるべきである。また、事業者には、自主回収を含めて、行政への報告と一般消費者への公表を義務とするべきである。

D市場調査など行政における監視システム・公表制度を強化すること
現在、農水省の表示Gメン、厚労省の食品衛生監視員など監視システムが分かれているが、これら監視システムを一元化し、人員の拡充など、内容を充実させるべきである。

E事業者間取引についても表示の義務付、トレーサビリティを充実すること
現行の食品表示制度では、表示対象は最終商品に限られる。しかし加工事業者において加工食品等の原料が明確でなければ最終商品の表示は正しく行われない。このことは、この間の表示偽装事件を見ても明らかである。今日の食品流通の複雑化、輸入原料を含む加工食品の原料の多様化においては、事業者間取引においても表示を義務化し、それとともに、トレーサビリティを充実させることが消費者のみならず最終食品の製造、加工事業者にとっても必要である。

F多様な取引も対象とすること
 昨今の食品購入は店舗のみならず、通信販売・ネット販売・テレビショッピングなど多様化している。これらの取引における商品についても、店頭販売同様、事前に消費者が表示内容を知ることが出来るようにするべきである。また、店舗でのバラ売り、外食なども表示義務を課するべきである。

G「ガイドライン」や「指針」ではなく法令による責任あるルール化を
現下の食品表示のルールには、法令で定められたものの他に、責任の所在があいまいで、違反しても何の罰則もペナルティもない「ガイドライン」や「指針」が多すぎる。「ガイドライン」や「指針」を、責任明確な「法令」へ切り替えるべきである。

H食品表示方法の原則
食品表示の原則は、商品そのもの(パッケージ等)に表示することを原則とする(商品を買う際の適切な選択のため)。そうしない場合は、やむを得ない事情がある場合に限定すること。

3.食品表示充実のための具体策(当面の提案)
@栄養表示制度を整理すること
栄養表示は、アメリカなど諸外国ではすでに導入されているが、日本では、特定の栄養素を強調する言葉を使用した場合等のみが対象であり、定め方も含め、消費者、事業者双方にとって、非常に分かりにくい制度となっている。また、海外からの輸入品にその表示があるにもかかわらず、制度化されていないため翻訳されていないという現状もある。全ての商品に分かりやすい栄養表示を実施し、健康保持のための選択に役立たせるべきである。

A製造年月日表示を導入すること
 賞味期限表示はガイドラインに基づき、事業者が任意に設定することができるので虚偽に対して取締りが困難である。一方、製造年月日の表示は、予め何時を製造日とするか定めておけば、裁量の余地のない客観的事実であり、行政当局が検証することも容易であり、虚偽表示は直ちに法律違反とすることができる。製造年月日表示により、零細事業者が夜中に作業することを事実上強制されるとの意見もあるが、むしろスーパー、コンビニなどの流通事業者が反省すべきことがらである。

B加工食品における食品添加物と原材料は明確に区分すること
 現在、食品添加物は原材料として一括表示欄に羅列されているため、見分けるのが困難である。食品添加物の摂取を避けたいと思う消費者にとって選択が難しい。その商品を構成する原材料と食品添加物は明確に区分して表示すべきである。
 また、かねてより改善が求められてきた「一括表示」の「詳細表示」への転換、「キャリー・オ−バー」と呼ばれ表示義務からはずされている原材料等に入れられた添加物類の表示、「加工助剤」と呼ばれ加工工程において利用された物質等についても関連事項として表示義務化、などを実施すべきである。

C加工食品などの原料原産国表示の対象品目を拡大すること
 これまで加工食品の原料原産地表示は少しずつ拡大されてきたが、なお不十分である。原料原産地表示については、加工食品は原則すべてについて義務化し(やむを得ない事情のあるものに限り例外あり)、加えてすべての外食・中食についても原則義務化(同上の例外あり)を行うべきである。(但し、中小零細企業については、別途、段階的な実施方策や支援策を考慮する配慮が必要)
 また、「さしみの盛り合わせ」や「カット野菜」など、生鮮食品に近いものは、委員会等の検討を待つまでもなく、ただちに原料原産地表示の義務化、ないし義務化範囲の拡大を実施すべきである。

D飼料を含むすべての食品を遺伝子組み換え表示の対象にすること
 遺伝子組み換え食品の表示は、油などの加工品については使用しても表示が免除され、また意図しない混入も5%まで許容されている。また、「不分別」というあいまいな表示もあり、表示のない食品が非組み換えか、組み換え原料を使用しているか判断できない。このように、消費者にとってたいへん分かりにくい表示になっていることから、これをEU並に分かりやすい表示にし、かつ混入率もEU並み以下に引き下げる必要がある。
 更に、遺伝子組み換え食品の表示については、家畜や養殖魚の飼料も対象とし、その飼料を食べさせた畜産物・畜産加工品・酪農製品・養殖魚などの製品にも、遺伝子組み換えの飼料を使用した旨の表示を行うべきである。

Eクローン家畜肉表示をはじめ食肉表示の見直し
 すでに出回っている受精卵クローン牛肉に表示義務がないので、消費者は選択することができない。また「国産牛」と書かれているものの意味を誤解している消費者もある。魚介類については魚種まで詳しく表示させていることと比較し、食肉の表示は不十分である。受精卵クローン家畜については、国産・輸入如何にかかわらず表示を義務化するとともに、食肉表示の一層の適正化を図ることが必要である(なお、体細胞クローンや遺伝子組み換えの畜肉・魚肉等については、食品としての安全性に重大な疑問があるため、その国内流通を認めないこと:表示の検討以前の問題)。

F製造所固有記号をやめて製造所名を書くように改めること
製造所固有記号をやめて製造所名を書くように改めること。また、製造所固有記号を使うならば、全国統一してデータベース化をして、消費者のみでなく、食中毒調査にあたる保健所も使いやすいようにする必要がある。

G米の表示
米の表示のうち、現下最も悪質である「格上げ混米」の表示適正化のため、クズ米を含む複数原料米の表示を抜本的に改正すること。具体的には、混米された米の各品種、産地(内外米の区別を含む)、産年と、その混合割合を表示する。また、クズ米を混入した場合には「規格外米混入、割合%」の表示を行うこと(それぞれを義務化する)。

H米トレーサビリティ制度と「産地情報伝達」
「産地情報伝達」という用語を「産地表示」(*)に変えるとともに、その対象に米粉パン、米粉めん、米みそ、米酢、その他米を原料に使う加工品を原則としてすべて対象とすること。やむを得ない事情がある場合にのみ対象外とし、また、対象外とする加工品の米原料使用割合は10%未満とすること。米粉パンなどは、その定義がないことが「産地情報伝達」義務化の対象外とする理由となっているため、その定義を明確にし、米粉100%使用でない場合には、その使用割合も表示義務化する。
(*)「産地表示」の表示方法の原則は、「2.「食品表示法」の基本」の「H食品表示方法の原則」に従うこと

Iトランス脂肪酸の表示を行うこと

J放射能汚染に係る表示
原則として、加工食品や外食を含む流通する全ての食品(ロット)について残留放射能の検査を実施し、その結果をベクレルの値(Bq/s)などとして表示する必要がある。検査する放射性物質は、放射性ヨウ素や放射性セシウムのみならず、放射性ストロンチウムやプルトニウムなどの他の危険な核種についても適宜実施し、その結果を表示する。

Kその他
残留農薬・抗生物質・成長ホルモン・各種薬品(農畜産物及び養殖魚、及びそれらの加工品等)や重金属等の有害物質についても、危険度合いに応じて検査頻度を上げ、何らかの形でその結果を表示すること。
食品が含有している水の表示、食品の内容成分のパーセント(%)表示なども必要と考える。
子どもの多動性障害との関連が疑われる人工着色料を含む食品に「子どもの活動と注意力に影響を与える恐れがある」と書くなど、警告表示もできるようにすること。


以上

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