11FSCW第28号
2011年12月20日


厚生労働大臣 小宮山洋子様
農林水産大臣 鹿野道彦様
文部科学大臣 中川正春様
消費者庁長官 福嶋浩彦様
薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会 放射性物質対策部会部会長 山本茂貴様
薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会 放射性物質対策部会委員各位
食品安全委員会委員長 小泉直子様
消費者委員会委員長 河上正二様


食の安全・監視市民委員会
代表 神山美智子

飲食品の放射能残留規制及び消費者の安全確保に関する意見書

 今般、厚生労働省及びその諮問機関である薬事・食品衛生審議会において見直しが検討されている飲食品の放射能残留規制値、並びにそれに関連した飲食品の安全の確保に関し、下記を要請します。


<要請事項>
1. 放射線に対して感受性の高い年齢層に対する万全の配慮を
2. 「放射性セシウム以外の規制値を設けない」のは認めがたい
3. 国産品と輸入品の規制統一
4. 主食のコメは一般食品より厳しい規制値であるべき
5. 放射能をため込みやすい「高リスク食品」の悉皆検査を至急実施して下さい
6. 食品加工の補助産品へも規制が必要(例:米ぬか)
7. 非食用の日用品原料(農林水産物)についても放射能検査をして下さい
8. タバコの放射能規制値を設けて下さい
9. 乾燥食品の放射能汚染を「水で薄める」ことは認めがたい
10. 放射能汚染「ロンダリング」の防止
11. 放射能汚染を計測する方法や計測器類の「標準化」
12. 学校給食に対するより厳しい規制値の導入
13. 規制値は外部被曝を含む総被曝量が1mSV/年以下となるよう決めて下さい
14. 生産者・農家・漁業者や食品関連産業等への万全の賠償・補償




<要請理由>
1.放射線に対して感受性の高い年齢層に対する万全の配慮を

乳幼児は放射線に対して感受性が高いため、「乳幼児食品」という新しい食品分類を創設して、一般食品よりも厳しい規制値を設けることについては評価できます。しかし、乳幼児以外の高感受性年齢ゾーンである「胎児(妊婦)」や「子ども」「若者(特に女性)」についても、放射能汚染に対しては厳しい規制値が必要かと思われます。2011年11月24日開催の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会放射性物質対策部会によれば(※)、年齢区分を「1歳未満」「1〜6歳」「7〜12歳」「13〜18歳」「19歳以上」と区分し、各年代ごとに摂取量や放射性物質(放射性セシウムのみ)による影響度の違いを考慮する(最も厳しい基準を使う)などとされていますが、その場合、上記若年年齢層の放射能被曝への危険性が十分に勘案されるよう、年齢別の規制とするか、さもなくば文字通り「最も厳しい基準」を設定して下さい。また、その際は、放射性物質について放射性セシウムのみならず、福島第1原発事故で環境へ放出されたすべての種類について考慮され、規制値に反映されるべきです。
一部の有識者の中には「子どもは食べる量が少ないから放射性物質の影響は小さい」などと、看過できない発言をしている人がいるそうですが、そうした軽率な考え方で「年齢別の影響度の考慮」をしないよう慎重な対応がなされるべきです。
(※)11月24日の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会放射性物質対策部会資料http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001w5ek.htmlの資料1参照


2.「放射性セシウム以外の規制値を設けない」のは認めがたい
新聞情報では、危険な放射性ストロンチウムやその他の放射性核種(テルル、コバルト、トリチウム、放射性銀等)はもちろん、現在の暫定規制値にある放射性ヨウ素やウラン、プルトニウム等超ウラン元素などについても規制値を設けないと報道されています。放射性セシウムのみを規制しておけば、それ以外の放射性核種は一定水準以下に抑え込めるなどという考え方は、非科学的であると思います。
薬事・食品衛生審議会での配布資料には「放射性セシウムの寄与度」(総被曝量のうち放射性セシウムから何%被曝するか)を用いて一括規制すると書かれていますが、これは危険な放射性ストロンチウムなどの放射性核種による汚染を十分に調べもせず(海を含む環境汚染の状態も飲食の汚染状態も十分には計測しない)、その深刻な汚染状況を消費者・国民に見えないようにするための隠蔽行為のように思えます。そもそも放射性セシウムとそれ以外の放射性核種の危険性は、その化学的・生物学的特性からそれぞれ相違します。一括規制できるようなものではありません。特に放射性ストロンチウムやプルトニウムなどはきわめて危険です。

EUなど諸外国では、放射性ヨウ素やウラン、プルトニウム、ストロンチウム等の規制値を設けている他に「Others(β核種)」などとする分類をしています。また、放射性セシウム以外に規制値を設けていないと、輸入食品についても危なくなってきます。従って、福島第1原発事故により環境に放出された全ての放射性核種について厳しい規制値を設けるとともに、生産・流通する全ての飲食品について放射能汚染されたものが消費者に食されることのないよう、万全の検査態勢を整備すべきです(全量ロット検査と、その結果の完全表示・公開)。


3.国産品と輸入品の規制統一
 現下では、国産と輸入の残留放射能規制が食い違っています(放射性セシウムの場合、国産が500ベクレル/kg、輸入品が370ベクレル/kg)。今回見直し後は、国産品と輸入品の規制値を統一して下さい。


4.主食のコメは一般食品より厳しい規制値であるべき
主食のコメについて、特別の厳しい規制値を設ける様子がうかがえません。コメを含むすべての穀物について、一般食品と同様に扱われています。日々たくさん食べる主食のコメについては、もっと厳しい規制をかけるべきです。
(参考:「コメ食・パン食(及び麺)」の議論)
「コメ食・パン食(及び麺)」の議論(コメをたくさん食べる人もいれば、パン食の人・麺多食の人もいるので、規制値を食品ごとに細かく分けると、個々人の摂取する食品の偏りによって差が出る)については、悲しいながら現状ではパン用・麺用の原料小麦がほとんど海外産なので、主食のコメの規制値を厳しくする議論とは直接関係はないと思われます。あえて小麦に特別な規制をするとすれば「国産小麦原料のパン・麺」を加えておけばいいと思います。それ以外の穀物は主食にはなっておりません。主食用の穀物を他の食品と区別して厳しく規制するのは、消費者の食の安全を確保する上では不可欠と思われます。


5.放射能をため込みやすい「高リスク食品」の悉皆検査を至急実施して下さい
食品の中に放射能をため込みやすいものがあります。具体例としては、キノコ、定着性の水産物(例:ナマコ)、食物連鎖の頂点近くにいる魚類・水産物、海藻及び海藻を食べる水生生物(例:ウニ)、イチゴを含むベリー類、ホエ―(乳製品)、乾燥食品、コケを食べ物にする生物の肉などです。こうした「放射能汚染傾向の強い高リスク食品」については、大至急で品目をリストアップの上、ただちに悉皆的な放射能検査を実施しなければ、その危険性は極めて高いと言わざるを得ません。現下のような「ザル検査」を続けておりますと、消費者・国民は意図せずして食品から放射能を取り込み、内部被爆してしまう可能性があります。


6.食品加工の補助産品へも規制が必要(例:米ぬか)
米ぬかが典型だと思いますが、食品を加工したり調理したりする場合に「補助資材」として使われるものについても、放射能汚染に対する規制値が必要だと思われます。米ぬかなど、一部の資材については農林水産省が定めることになりますが、その場合でも、「飼料用」ないしは「肥料用」など農林水産生産関連の規制に限定されるため、やはり「食品加工用」について明確に規制値が定められるべきです。


7.非食用の日用品原料(農林水産物)についても放射能検査をして下さ
「非食用」で人間が体に付けたり取り込んだりして使う資材の原料、たとえば医療用資材とか薬品原料とか化粧品原料とか、こういうものの放射能汚染規制値を決め、その検査態勢をしっかり創って下さい。その典型が「牛資源」です(その他にも、家畜資源、養殖魚を含む水産資源、食塩、漢方薬原料、皮革製品、絹、木材、線香、工業原料用の海藻、工業原料用の農産物など)。


8.タバコの放射能規制値を設けて下さい
タバコについては、国産タバコを一手に買い受けているJTが、科学的根拠もないままに(特に危険なプルトニウムや放射性ストロンチウムに留意することもなく)、一般の飲食品と同様の自主規制値(放射性セシウムで500ベクレル/kg)を設けていますが、これではとても「安全」とはいえません。国として、消費者・国民の安全を守るべく、科学的根拠に基づいてきちんと放射能規制値を定めるべきです。


9.乾燥食品の放射能汚染を「水で薄める」ことは認めがたい
お茶及びキノコなどの乾燥食品を水で戻して汚染を薄めて規制値に当てはめるというのは容認できません。どうしてもそうするというのなら、水で戻す前の汚染数値を表示・公表する、水で戻す以外の方法では食べるなと表示する、ことが最低限必要です。本来は、いかなる食仕方であっても放射能規制値を超えることはないことを前提として規制値を定めるべきです。
 また、「水で戻す」規制値を使う場合には、乾燥品は高い放射能汚染物となりますから、お茶やキノコなどの生産者・流通業者はかなり被曝する可能性があります(呼吸による内部被爆、外部被爆)。それについても被曝防止対策を厳しく定める必要があると思います。


10.放射能汚染「ロンダリング」の防止
放射能汚染「ロンダリング」の防止が必要です。簡単に言えば、放射能で汚染された飲食品などを、汚染されていない飲食品などと「混ぜて薄めて」売ったりできないよう規制をかけて下さい、ということです。ある新聞報道によりますと、放射能にかなり汚染された腐葉土やお茶が、汚染されていないものと「混ぜられ」「薄められて」売られているそうです。その他にも牛乳や米が懸念されるとも書いてありました。更にそれ以外にも「混ぜることのできるもの」であれば何でも心配です。特に肥料や飼料などはそうです、
 こうした放射能汚染物質の「混ぜ合わせ」による「ロンダリング」は厳しく取り締まられるべきです。何故なら「混ぜて薄めて」規制値をくぐりぬけても、結局は人間や家畜の体に入ってくるわけですから、時間をかけて被曝しているだけのことです。一定の濃度以上に放射能に汚染されたものは廃棄され隔離される必要があります。
有効な規制のためには、放射能汚染物を放射線障害防止法上の指定物質にして、ひとたび規制値を超えて汚染されていると分かった場合には、当該汚染物は簡単には処分・取扱できないよう厳しい規制が必要です。当然、違反した業者等に対しては厳しい罰則も必要でしょう。そして人や環境に悪い影響をもたらさないように隔離遮断した状態で廃棄されなければなりません。


11.放射能汚染を計測する方法や計測器類の「標準化」
飲食品の放射能汚染を計測する方法や、そのための計測器類について、そろそろ厳しいルール化が必要だと思われます。現下は「非常事態」ということで、計測機器類は何でもいい、計測方法も大雑把なガイドラインがあったりなかったりの状態です。
また、計測機器類についても、空間線量計測器についてはかなりいい加減なものもあるようですから、飲食の汚染を調べる機器類についても懸念がないわけではないでしょう。やはり「計測機器指定制度」や「承認制度」のようなものがそろそろ必要なのではないでしょうか。計測の仕方や計測器がきちんとしたものでないと、いくら規制値が厳しくても意味がなくなる可能性があります。「悪意」による放射能検査への作為を防ぐためにも、計測方法や計器類にもルールがあった方がいいと思われます。


12.学校給食に対するより厳しい規制値の導入
今般、学校給食の測定機器類並びに給食食材の目安として40ベクレル/kg以下が文部科学省より示されていますが、子どもたちが食べる給食に適用する数値としては、まだ高いと思われます。国による財政的な支援を充実させ、精度の高い測定機器類の配備を大至急行うことで、学校給食における放射能汚染を出来る限り低く抑え込んでいただきたい。また、学校給食の食材については、出来る限り非汚染地域のものを使うよう国が方針を明確化すべきです。


13.規制値は外部被曝を含む総被曝量が1mSV/年以下となるよう決めて下さい
 今回見直しされる飲食品の放射能残留規制については、環境の(追加的)放射能汚染に伴う呼吸による内部被曝や外部被曝と合わせた年間総被曝量が1mSV以下となるよう、厳しい値を設けて下さい。しかし、福島県を中心に広く東日本の各地では、いわゆるホット・スポットが存在して外部被曝量や呼吸からの内部被曝量が大きくなってしまう地域があります。そうした地域については、規制上「特別地域」に指定し、一般地域とは別のより厳しい規制値を設けることで、年間1mSVの総被曝量を超えることのないよう万全の対応をなすべきです。


14.生産者・農家・漁業者や食品関連産業等への万全の賠償・補償
規制値や放射能検査体制を厳しくすることに伴う当面の出荷停止増加に対しては、ダメージを受ける生産者・農家・漁業者や食品関連産業等への万全の賠償・補償を用意し、併せて経営再建のための支援を充実させることが必要です。現下のように、被害者への賠償・補償が不十分であったり、支払いが遅れたりしていることは、許されることではありません。
更に、高レベルの放射能汚染地域の住民(生産者・農家・漁業者や食品関連事業者を含む)については一刻も早く避難を実現し、特に、生産者・農家・漁業者の場合には、集落丸ごとの移転を移転先自治体などとも協力し政策的に支援することで、移転先での営農や漁業再生が成功裏に展開できるよう、生活補償・経営補償も含めて万全の措置がとられるべきです。また、中低レベルの汚染地域では、住民に「避難する権利」・「除染を受ける権利」を認め、高レベル汚染地域の住民と等しく賠償・補償・再建支援がなされなければなりません(※)。
(※)高レベル汚染、中低レベル汚染
高レベル汚染地域とは、放射線管理区域指定となる5.2mSV/年(0.6マイクロSV/時)以上の汚染地域(「原則避難」)
中低レベル汚染地域とは、放射線障害防止法の定める一般人の年間被ばく限度1mSV/年〜5.2mSV/年の地域(「避難する権利」「除染を受ける権利」)                      

以上

<問い合わせ先> 
食の安全・監視市民委員会事務局
担当者:山浦
〒169-0051東京都新宿区西早稲田1-9-19-207
日本消費者連盟内
Tel 03(5155)4765





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