14FSCW第7号
2014年9月1日

食品安全委員会委員長 熊谷進様


食の安全・監視市民委員会
代表 神山美智子

「高濃度にジアシルグリセロールを含む食品に関するワーキンググループ」
の運営についての要請書



 2014年7月7日にほぼ2年ぶりに「高濃度にジアシルグリセロールを含む食品に関するワーキンググループ」の会議が開催されました。そこでは、高濃度にジアシルグリセロールを含む食品、すなわち花王の「エコナ」の安全性評価について


1)高濃度にジアシルグリセロール(DAG)を含む食品(エコナ)については「評価は困難」
2)DAGの発がん促進作用については「懸念はない」
3)夾雑物として発見されたグリシドール脂肪酸エステルの発がん作用については「可能な限り低いレベルに抑えるべき」
という結果の報告書案が示されました。

また、評価書案の中(33ページ)には、2)のDAGの発がん促進作用について、安全性評価には、影響が見られなかった野生型の動物実験のみを採用して、発がん作用が示唆された遺伝子改変動物を使った実験は「あくまで参考として用いるべき」と判断されています。これは、エコナ問題の教訓から何も学んでいない結論と言えます。

そもそもエコナに夾雑物として発見されたグリシドール脂肪酸エステルの発がんリスクは、生涯ばく露で2500人当たり1人程度と想定されます。しかしそのリスクは野生型の動物実験では検出されませんでした。より感受性の高い遺伝子改変動物を使った実験でリスクが示唆された点を追求していった過程で見つかったものです。
それを今後は、新開発食品の安全性評価について野生型の動物実験のみで評価するとルールを決めた場合、エコナと同等の発がんリスクを持った食品成分が素通りしてしまうことになります。

 なぜそのようなことが起こるのでしょうか?食品添加物や残留農薬に採用されている通常の野生型の動物実験では、実際に人が摂取する量よりもはるかに多い(1000倍〜1万倍)の量を動物に摂取させます。そうした高用量で明らかになった毒性と摂取量のデータを元に、動物での無毒性量(NOAEL)や人での摂取許容量(ADI)を求めます。しかし食用油のような食品成分の場合、実際に人が摂取している量と同程度のレベルの摂取量でしか動物実験できません。
 評価書案(11ページ)では、DAGの発がん促進作用の動物実験は「ヒトにおける一日推定摂取量を上回る高用量まで実施された試験」だと指摘されています。しかしエコナの人での推定摂取量は体重1sあたり0.532gなのに対して、動物実験での摂取量の最大量は体重1sあたり10g程度(試験F-2表8)と、20倍程度の差しかありません。

 エコナの教訓を学べば、新規食品成分の安全性評価については、動物実験で高用量の投与ができない欠点を補足するために遺伝子改変動物を使った実験や2段階発がん試験など、より感度の高い実験を積極的に導入して、真の意味で安全側に立った評価手法を作るべきです。
 実際に、今回の高濃度にDAGを含む食品の評価の審議の過程では、上記の問題を指摘していた委員もいましたが、今回の会議では排除されてしまっています。

 つきましては、食品安全委員会の安全性評価の信頼性を確保するために、今後のワーキンググループの運営について以下のような改善を要請いたします。


要請

1)過去の審議の中で、食品成分の安全性評価の手法について、より慎重な意見を発言していた委員(山崎壮氏、菅野純氏、及川眞一氏、津田洋行氏)についても再度、審議へ参加依頼を行なうこと。


2)新開発食品での食経験のない新たな食品成分の安全性評価については、人が通常摂取する量をはるかに超える高用量での動物実験が不可能である点を踏まえ、農薬や食品添加物とは違い、感受性の高い動物を使った動物実験などのデータも積極的に導入することを検討すること。


 以下の要請につき、9月10日までにご返答いただけますよう、お願い申し上げます。



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