2015年5月29日

消費者庁表示対策課食品表示対策室 御中

食の安全・監視市民委員会

機能性表示食品の食品表示法違反に関する疑義情報の提供


  機能性表示食品として届出された情報の表示について、以下8件について、食品表示法違反だと判断される事項があるため、疑義情報を提供します。適切な措置をお願いいたします。
1)A21のキューサイ株式会社「ヒアルロン酸コラーゲン」
疑義の内容
 1)届出された臨床試験の論文が査読付きではなく、機能性表示食品の届出等に関するガイドラインに違反しています。
 当該商品の機能性の科学的根拠として消費者庁に提出された最終試験を用いた臨床試験に関する論文が掲載された雑誌「グルコサミン研究」は、査読のある雑誌ではなく、投稿規定にあたる「『グルコサミン研究』執筆要項」(添付1)には査読に関する規定がありません。雑誌の出版元である「グルコサミン研究会」の事務局である有限会社エイド出版の担当者も、私の電話による問い合わせに対して「査読のある雑誌ではありません」と認めています。
 機能性表示食品の届出等に関するガイドラインでは、商品に表示しようとする機能性の科学的根拠を説明するものとして、最終製品を用いた臨床試験の提出資料については「査読付き論文」であることが条件として記されています(P27)。
 査読なしの論文の場合、その科学的信頼性は低く、そうした低いレベルでしか機能性が証明されていない商品が機能性を表示して販売されることになれば、一般消費者の利益が害されることは明らかです。

 2)掲載雑誌と著者等との間に利益相反による問題が否定できない
 機能性表示食品の届出等に関するガイドラインでは、「利益相反による問題が否定できない雑誌への掲載論文を、機能性表示食品の機能性に関わる科学的根拠としてはならない」(P27)と記されています。
 当該商品の届出された資料では、届出企業のキューサイ株式会社は「掲載雑誌は、著者等との間に利益相反による問題が否定できる」と主張しています。
 しかし実際には以下のような利益相反の疑いが存在します。
提出された論文の筆頭著者である長岡功氏は、掲載雑誌「グルコサミン研究」の編集委員であり、また雑誌の母体である「グルコサミン研究会」の会長でもあります(注1)。また共著者の株式会社TTC(臨床試験委託会社)の山本哲郎氏はグルコサミン研究会の評議員(注2)で、株式会社TTCは賛助会員でもあります。
 届出された論文には利益相反に関する情報が記載されていませんが、もしキューサイが、長岡功氏や山本哲郎氏に対して、研究費などで経済的利益関係があった場合、長岡氏や山本氏が掲載誌のグルコサミン研究への論文の掲載に対して何らかの便宜を図った疑いがぬぐえず、利益相反による問題が否定できない状況にあると考えられます」
 届出企業、臨床試験受託会社、研究者、雑誌の間に利益相反が存在するような商品が、機能性表示を表示して販売されることになれば、一般消費者の利益が害されることは明らかです。
注1) http://glucosamine.kenkyuukai.jp/special/?id=3442
注2) http://glucosamine.kenkyuukai.jp/special/?id=12880

 3)論文の内容が国際的にコンセンサスを得られた指針に準拠しておらず、機能性があるという証拠としては不十分です。
 機能性表示食品の届出等に関するガイドラインでは、臨床試験の論文に関して「国際的にコンセンサスの得られた指針(CONSORT2010声明)に準拠」することを求めています。
 ただ「食品表示基準の施行後1年を超えない日までに開始(参加者1例目の登録)された研究については、国際指針に準拠していない形式による報告でも差支えないものとする」という猶予期間的な措置も取られています。
 しかし、消費者の利益保護の観点から見ると、この猶予措置の意味は、既存の論文や、すでに開始されている臨床試験など、すでに変更不可能な部分について、一部CONSROT声明に準拠していなくても構わないという点に限定すべきです。CONSORT声明に準拠しておらず、それが原因で、機能性の証拠が著しく損なわれている論文は、猶予期間内であっても、認めるべきではありません。
 当該論文では、コラーゲンペプチド含有食品の膝関節痛への効果を検証していますが、なにが主要なアウトカムで、なにが副次的なアウトカムなのかが明示されることなく、「日本整形外科学会OA治療成績判定基準(JOA)」の5項目×4回(4週目、8週目、12週目、16週目)、「日本版変形性膝関節症患者機能評価尺度(JKOM)」5項目×4回、痛みのVAS3項目×4回と52回の検定がくりかえされ、その中でただ1回(安静時のVASの8週目)だけ、設定した有意水準5%で統計的有意差が出たことを根拠に効果ありと考察しています。また4種類の軟骨代謝マーカー、9種類の炎症マーカーの評価は、開始前との比較での有意差であり、群間比較の結果は記載されていません。
 有意水準は5%に設定されていますが、統計解析では、測定項目の数を増やして検定を繰り返すと、本当は差が無いのに偶然有意差が出てしまうT型エラーの確率が大きくなります(多重検定の問題)。それを防ぐためにCONSORT声明では、主要なアウトカムと副次的なアウトカムを事前に明示するように求めています。
 当該論文では、まさに多重検定の問題を呈していて、52回の検定中のたった1回だけで有意差が出たことを持って機能性の証拠とすることは不適切です。(もう一回JOAスコアの屈曲角度及び強直・高度拘縮の項目で8週目に有意差がついたと発表されていますが、これは有意水準が10%未満(p値<0.1)で、当初設定した5%の二倍となっているので有意差ありと認めるのは妥当ではありません)。
 機能性表示食品の届出等に関するガイドラインで求められている機能性の証拠のレベルに達していない商品が、機能性を表示して販売されるようなことになれば、一般消費者の利益が損なわれることは明白です。 

2)A8の株式会社リコムの「蹴脂粒」
疑義
 同一関与成分を使った別の商品(蹴脂茶)が、特定保健用食品として申請され、その安全性評価を行った食品安全委員会が、2015年5月12日に「安全性を評価できない」という評価結果を報告しました。
 内容は、企業が考察している作用機序(βアドレナリン受容体への刺激作用)を前提にすれば、同種の受容体をもつ心血管系、呼吸器系、生殖器系など多岐にわたる臓器に影響を及ぼす可能性が否定できないというものです。
 食品安全委員会は、企業から提出された資料からは、安全性を確認できないため、作用機序および安全性について科学的に適切な根拠が示されない限り、安全性を評価することはできないというものです。
 安全性が懸念され、その検証が不十分であると国の中立的な専門機関が判断した同一成分を使った食品を、機能性を表示して販売するとしたら、一般消費者の利害が害されることになることは明白です。

3)A11 カルピス株式会社の「アミールWATER」
疑義
 機能性の証拠資料として提出されているシステマティックレビューでは、対象を日本人に限定しているため、海外で実施された同じ機能性関与成分を使った臨床実験が外されています。欧州連合の欧州食品安全機関が2012年に発表した同じ機能性関与成分による同じ血圧への影響に関するレビューでは、日本国内や海外で実施された論文25件を対象にしており、因果関係は確立されていないとして、機能性表示は却下されています(注1)。
 海外でより広く網羅的に実施されたシステマティックレビューの結果を無視して、国内の一部の臨床実験に限定して機能性があると結論づけるやり方は、機能性表示食品の届出等に関するガイドラインに違反していると考えられ、そうした商品が機能性を表示して販売されることになれば、一般消費者の利益が害されることは明らかです。

注1) http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/2715.htm

4)A20のロート製薬の「ロートV5錠」
疑義
 この商品についての機能性の証拠として届けられた情報は、消費者庁が定める「機能性表示食品届出等に関するガイドライン」で定めるシステマティックレビューを悪用したケースです。
 システマティックレビューとは本来、すでに数多くの臨床試験が存在する場合に、それらすべてを網羅的に収集しチェックして総合的に効果ありと判断できるかを評価する方法です。
 しかしこのケースでは、レビューの対象となった論文は、原料の製造会社であるケミンフードが実施した臨床試験が1件だけです。その1件の論文をケミンフードの別の社員がシステマティックレビューをして効果ありと評価しているという、自画自賛、我田引水的なレビューとなっています。
 研究の数が少ない関与成分についてはシステマティックレビューではなく、事前登録を行った最終製品による臨床試験だけでの証明に限るべきです。
 そうしないと届出企業や原材料を生産する企業だけしか臨床試験をしていないような、また論文数が少なければ少ないほど機能性が認められやすくなるという、本来のシステマティックレビューの目的から逸脱することになります。
 また原材料会社がシステマティックレビューを好む背景には、企業に対して
 研究自体がごくわずかに限られるものが、システマティックレビューを悪用して機能性があると結論づけるやり方は、機能性表示食品の届出等に関するガイドラインに違反していると考えられ、そうした商品が機能性を表示して販売されることになれば、一般消費者の利益が害されることは明らかです。

5)A4のキユーピー株式会社の「ヒアロモイスチャー240」
疑義
 この商品についての機能性の証拠として届けられた情報は、消費者庁が定める「機能性表示食品届出等に関するガイドライン」で定めるシステマティックレビューを悪用したケースです。
 システマティックレビューとは本来、すでに数多くの臨床試験が存在する場合に、それらすべてを網羅的に収集しチェックして総合的に効果ありと判断できるかを評価する方法です。
 しかしこのケースでは、レビューの対象となった論文は、届出企業であるキユーピーが資金提供をしている3件しかありません。そのキユーピーの臨床試験の論文を、キユーピーの別の社員がレビューして効果ありと判定しているという、自画自賛、我田引水的なレビューとなっています。
 研究の数が少ない関与成分についてはシステマティックレビューではなく、事前登録を行った最終製品による臨床試験だけでの証明に限るべきです。
 そうしないと届出企業や原材料を生産する企業だけしか臨床試験をしていないような、また論文数が少なければ少ないほど機能性が認められやすくなるという、本来のシステマティックレビューの目的から逸脱することになります。
 研究自体がごくわずかに限られるものが、システマティックレビューを悪用して機能性があると結論づけるやり方は、機能性表示食品の届出等に関するガイドラインに違反していると考えられ、そうした商品が機能性を表示して販売されることになれば、一般消費者の利益が害されることは明らかです。
同様の問題は、同じヒアルロン酸ナトリウムを関与成分とする、A5のアサヒフードアンドヘルスケア株式会社の「ディアナチュラゴールドヒアルロン酸」と、A17の森下仁丹株式会社の「ヒアルロン酸」にも当てはまります。

6)A7のファンケルの「えんきん」
疑義
 この商品についての機能性の証拠として届けられた情報は、最終製品での臨床試験の論文です。
 この論文が掲載されたジャーナルは、一応査読ありとなっています。しかし論文を見ると投稿日(2015年3月2日)と受領日(2015年3月7日)が5日間しかありません。通常の査読プロセスでは少なくとも数週間〜数か月かかるのに対して、あまりにも短すぎ、きちんとした査読がなされたとは思えません。
 論文の内容をみても、統計解析で測定項目の数を増やして検定を繰り返すことでのと、本当は差が無いのに偶然有意差が出てしまうI型エラーの確率が大きくなる問題(多重検定の問題)が出ています。
 機能性表示食品の届出等に関するガイドラインで求められている機能性の証拠のレベル
に達していない商品が、機能性を表示して販売されるようなことになれば、一般消費者の
利益が損なわれることは明白です。


7)機能性表示食品として届出されたA1,4,6,12,13,14,15,16,17,18,20,21の商品
疑義
 上記の12件の商品は、安全性の提出情報の中で、関与成分を含んだ自社製品をはじめとした健康食品の販売歴をもって、食経験が十分にある根拠としています。
 中には、A20のロートV5粒の関与成分ゼアキサンチンの場合、サプリメントしての販売開始は2014年とされており、それによる食経験は1年にも満たないものとなります。
 ガイドラインには食経験の判断として何年間が必要かという明示はされていませんが、平成26年7月30日の「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会報告書」の8ページには、「食経験の考え方として、例えば、FDA は仮の目安として、広範囲に最低 25 年摂取されていることを、また、オーストラリア・ニュージーランド食品基準局(Food Standards Australia NewZealand: FSANZ)は、摂取期間(2〜3世代あれば使用歴として十分だが、5年以下では短いと考えられること、また、条件次第では 10〜20 年でも十分な使用歴と考えられること)、摂取量の同等性、摂取集団の外挿性等の条件を満たしていることを、それぞれ示している」
と例示されています。
 それらの例示と比較しても、食経験1年未満というのはあまりにも短すぎます。届出事業者に対して、ほかのより長期的な食経験を判断できる根拠または、安全性試験のデータの提出を求めるべきです。

8)機能性表示食品として届出されたA5,6,7,11,13,15,19,21の商品の表示
疑義
 食品表示基準第8条関係の別表第二十では、機能性関与成分とその機能性と、国による評価を受けたものではない旨の3点の表示は、容器包装の同一面に表示すべきという規定が定められています。
 しかし上記の8件の届け出情報のパッケージの表示を見ると、機能性関与成分とその機能性の表示は表面に表示してあるにもかかわらず、国による評価を受けたものでない旨の表示は、裏面に表示されています。
 これは明らかな表示基準違反だと思われるので、速やかにパッケージの表示の訂正を求めるべきです。

以上

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