newsletter No.5

No.5

2004年11月1日

 目  次
・と畜場見学記
・FSCW活動報告
・「食の安全・安心」は「食の安定政策と基盤」から
・質問に答える/ほか
・学習会報告
・FSC傍聴記
・FSCW運営委員会紹介
・メールのおたより/事務局から
・FSCW運営委員会報告
・第2回学習会の案内

巻頭言

昨年5月に作られた食品安全基本法の基本理念は、「国民の健康保護が最も重要」「農場から食卓まで安全が守られなくてはならない」「国際的動向・国民の意見に配慮し、科学に基づいて対策をとらなくてはならない」という三つです。
 食品安全委員会もできて、意見交換会などは数多く開催されるようになりましたが、食品安全基本法の基本理念はどうなってしまったのでしょう。BSE対策に関する意見交換会では、9人の意見陳述人のうち6人が全頭検査廃止に反対したのに、その後の専門調査会、食品安全委員会は一挙に20か月齢以下の牛の検査廃止になだれ込んでしまいました。 感染を発見できない検査にお金をかけるのは無駄という問題は、厚労省と農水省という管理部門の担当で安全委員会の仕事ではありません。両省が自分の責任で意見交換会を開いて決めれば良いのに、科学というお墨付きがほしいばかりに、食品安全委員会を悪用しているとしか思えないのです。

 また健康食品問題は見直しという名の規制緩和で、条件付トクホ(科学的に証明されていない機能を表示して良い特定保健用食品という制度)や、許可不要で規格基準に合っていれば良いだけのトクホ、果ては疾病リスク低減表示まで認めようというのです。カルシウムが骨を作るのに大切な栄養素であり、若いときからカルシウムの多い食品をとって、太陽の下で運動すれば、年取ってから骨粗鬆症になるリスクを減らせることは事実で、小魚や牛乳を飲みましょうなどという指導がなされるのです。カルシウムを豊富に含むという錠剤型加工食品にこのような表示を認めるのは、国民の健康保護に資するとは到底思えません。

 最近ウコンが肝臓に良いとしてはやっているそうですが、肝硬変の女性がウコンで死亡したという報道がありました。コメントを寄せた医師は、身体に効く成分は副作用もあると言っています。健康食品の規制緩和は、健康被害のおそれを増やすかもしれません。
 私たちは健康食品について意見を出し、厚労省担当者と意見交換もしました。この方たちも、健康食品だけでは健康にならないと分かっておられるのに、しかし一度決めた方針は変えないようです。
 2004年10月、最高裁判所で関西水俣病訴訟の判決があり、対策の遅れなどについて国や県の責任を認めました。水俣病はチッソという会社が垂れ流した工場排水中の有機水銀により、水俣湾に棲む魚介類が汚染され、これを食べた人が水銀中毒になったもので、公害病であると同時に食中毒なのです。

 食中毒被害を訴えている患者を、認定基準を厳しくすることにより被害者ではないとして切り捨ててきたのは環境省です。そして環境省は、最高裁判決が出ても、認定基準の見直しは行わないなどとも言っています。
 食品安全基本法の、国民の健康保護が最も重要という基本理念に照らせば、ただちに認定基準を見直して、被害者全員を救済することこそ国の責務ですし、厚労省も食中毒被害者として、救済方法を考えるべきです。
 そして同じことがカネミ油症被害者についても言えます。家族で同じ油を食べて全員被害を訴えているのに、認定患者と未認定患者が出ているのです。今、カネミ油症の抜本的救済を求める誓願署名運動も始まっています。

(神山美智子)