newsletter No.6

No.6

2005年3月25日

 目  次

・FSCWの活動
・食品安全委員会傍聴記
・「食の安全」こそ「ダイオキシン対策」
・やさしい「農」生物学
・製造者固有番号ってわかりますか
・精米・炊飯時に「米」品質改良剤
・書評「バイオハザード原論」
・FSCW運営委員会紹介
・おたより/事務局から
・FSCW運営委員会報告
・第3回総会のご案内

巻頭言

 昨年最高裁判所で、水俣病に対する国と県の責任を認める判決が出されました。水俣病とカネミ油症の被害者認定制度について、岡山大学大学院の津田敏秀氏が批判する意見を述べ、最近出された『医学者は公害事件で何をしてきたのか』(岩波書店)では、個人名も出して批判を展開しておられます。この本の帯には「中央政府の官僚は、被害者の非難の声を何とかやり過ごし、時が過ぎるのを待つのが自らの本職であると勘違いしているのではないかと感じることすらある。そして全力を挙げて、あらゆる公的資金を投入し、学者を利用し、議論の焦点を曖昧にしようと努力してくるのだ。」(本書はじめにより)と書いてあります。食品の安全問題に取り組んできた人たちも同じことを感じてきました。

 津田氏は、水俣湾の魚を食べた人・カネミ油を食べた人(暴露があった人)で感覚障害などの症状がある人の中から、暴露がなくても症状が出たかもしれない人を除外しようとするのが認定制度だが、200年も前に、それが不可能であることをヒュームが明らかにしていると言っています。ヒュームはイギリスの哲学者で、人生論が岩波文庫にあったけれど絶版だそうです。友人に聞いたところ、中央公論社の世界の名著の中にもあり、今も売っているはずだと言われましたが、実はこれも絶版だったのです。そこで生れて初めて、ネットで出品されていた、たった1冊の世界の名著を買いました。

 私は本格的哲学書など読んだこともないまま年を取ってしまいましたが、哲学科という学科もあるでしょうし、法哲学という学問もあるのです。
 そういう方面で勉強しようという学生はどうするのでしょうか。専門家でもロックやヒュームなど読む必要はない、ということなのでしょうか。

 本号から始まる生井先生の連載の中に、20年ほど前の某財界人の言葉として、「頭を使う人は千人か万人に一人いれば良い」が紹介されています。基本的な哲学書が絶版になる現代は、頭を使う人はいらないということかなと感じています。
 今年2月、日本で初めてBSE由来の変異型クロイツフェルトヤコブ病で死者まで出たというのに、直後の牛丼再開には客やマスコミが群がり、アメリカ産牛肉輸入再開を求める署名にすでに60万人も参加したそうです。

 厚労省は既存添加物(天然添加物)についても、業界の資料に基づいて食品添加物公定書を作っているということも聞きました。既存添加物は95年の食品衛生法改正時に、天然添加物も原則指定を必要としたため、改正法施行当時使用されていたものをリストに収載しただけで、安全性の審査などは行われていません。そんなものを業界の資料だけで公定書に入れるのはどうかしていると思いますが、関係者以外誰も知りません。

 世界的にまだまだ問題が指摘されている環境ホルモンでさえ、日本ではすでに「終わった!」とされ、環境省は産業界に配慮して、SPEED98のリストを廃止する方針です。
 また、DDTを含むことで知られていた農薬のケルセン(ジコホル)が、化学物質審査規制法により、第一種特定化学物質(難分解性・蓄積性・慢性毒性)に指定されることになりましたが、報道すらされていません。

 マスコミの不勉強とは以前から言われていましたが、物を考えない人が増えたのか、あるいは考える人が排除されているのか、実に心配です。

(神山美智子)