newsletter No.28

No.28

2011年3月24日

 目  次
・食の安全・市民ホットライン現状報告
 「発足して5カ月―『ホットライン』の成果と課題―」
・原料原産地表示の拡大について
・連載/食品と法律(7)「表示一本化法案」
・食品表示制度を一元化する「食品表示法」の提案
・書評/『世界の食料ムダ捨て事情』
・続々とあがるTPP反対の声
・連載/やさしい「農」生物学(23)
・国内使用1兆円に達した食品添加物
・トピックス(1)食品表示部会の原料原産地表示議論について
 トピックス(2)コーデックス連絡協議会報告
 トピックス(3)若い女性の安易なダイエット
・FSCW運営委員会報告
・第9回総会と講演会案内

巻頭言

  エジプトなど中東で大規模なデモが起きています。中東ほどでないにしても、貧富の格差が広がり、毎年自殺者が3万人も出る日本で、しかしまったく不満をぶつけるデモがありません。
 『週刊金曜日』編集委員の雨宮処凛さんが、若者に「怒れ」というと、自己責任論で縛られてきた若い人たちは、その怒りを自分に向けてしまうという趣旨のことを書いていました。もしそうなら、デモが起きない最大の理由は自己責任論の呪縛ということになります。
 それと同時に、私達の不幸は、目に見える独裁者を持たないことでもあります。日本では、何を、誰を倒すと世の中が良くなるのか、まったく見えません。

 このたび公表された行政刷新会議の中間報告案で、国際的に使われているとされる添加物15品目の指定促進が取り上げられています。
 アメリカ政府は、毎年、「外国貿易障壁報告書」を世界中に突き付けて、アメリカに不利益な各国の規制の廃止や緩和を求め続けています。これが今回の行政刷新会議中間報告書案にそのまま取り入れられました。

 しかし、このことを一体誰に怒れば良いのでしょう。食の安全に関する知識も関心もないまま、平然とこんな決定をする行政刷新会議メンバーでしょうか?原案を作った官僚でしょうか?何も報道しないマスコミでしょうか?それともアメリカ政府通商代表部でしょうか?
 デモがない一方で、あちこちに行列ができています。あの行列は、良く言われる「パンとサーカス」という愚民政策の結果でしょうか。
 ウィキペディアで調べてみたところ、ローマの詩人ユウェナーリスの詩が紹介されていました。

 「我々民衆は、投票権を失って票の売買ができなくなって以来、国政に対する関心を失って久しい。かつては政治と軍事の全てにおいて権威の源泉だった民衆は、今では一心不乱に、専ら二つのものだけを熱心に求めるようになっている――すなわちパンと見世物を・・・」(一般的にサーカスと言われているが、実際は競技場での戦士による闘いなどの見世物だそうです)
 国政に対する関心を失った民衆が一心不乱に行列に並んでいるのだとしたら、悲しい限りです。

(神山美智子