newsletter No.60

No.60

2019年3月25日

 目  次

・特集・ゲノム編集を問う
 「厚労省のゲノム編集食品の食品衛生法での対応に関する報告書を批判する」
 「新開発食品調査部会傍聴記:ゲノム編集の規制後退は許されない」
 「ゲノム編集食品の安全審査・表示問題で署名提出院内集会を開催」
 資料:ゲノム編集作物・食品の取扱いに関する政府の動き
・子ども向けサプリメントが拡大しています
・連載・食品と法律(32)「健康食品と情報公開」
・講演会報告「環境ホルモン・ネオニコチノイドの研究最前線」
・放射線照射の「芽どめじゃが」を見かけたらご連絡を
・トピックス「TPP11や日米FTAの問題点」
・FSCW運営委員会報告
・2019年連続講座「安全に暮らしていくために」案内

巻頭言

 私は中学校の学芸会で、「ハーメルンの笛吹き男」という英語劇に端役で出演したことがあります。皆様もご存知と思いますが、ドイツの伝説に基づいてグリム兄弟が作った物語です。
 ハーメルンの街でネズミが集団発生し、困っていたところに笛吹き男が現れ、笛を吹いてネズミを川に誘導し、溺死させたのに、市民が約束した報酬を払わなかったというお話です。怒った男は笛を吹いて街中の子どもを洞窟に誘い込み、子どもたちは二度と戻って来なかったというのです。
 私は、報酬を払わないと決めた市長に対し、「Shame on you!」(恥を知れ)と怒鳴る市民の役でした。この市民の子は、途中で足を傷め、笛吹き男に付いていけなかったので、命が助かります。
 最近私は、このセリフを何度も思い出しています。あまりにも「Shame on you!」の事態が多すぎるからです。
 モリカケからセクハラ、公文書改ざん、辺野古、統計偽装、またアンダーコントロールで誘致したオリンピックまで、この国の政治・政権中枢は、あまりに腐敗しています。まさしく唾棄すべきとはこの状況のことです。あったことをなかったことにし、追及されると白を切る。トップがこれですから、「悪いことをしてはいけない」という人間の基本的倫理が崩れて当然です。
 特殊詐欺から、事前に現金の有無を確認した後で押し入る強盗まで、何でもありです。
 私たちは、今、ハーメルンの笛吹き男に導かれて奈落に向かっています。私はもう高齢ですから、近々奈落に落ちるとしても、私たちの子や孫まで道連れにして良いわけがありません。子どもが消えたハーメルンの街は存続を絶たれた街のことです。
 3月1日付の東京新聞によれば、全国調査で約3000人の子どもの安全確認ができていないそうです。虐待を受けた子は疑いを含め143人とのこと。 
 社会全体に、目に見えない澱のような怒り・不安・不満が充満しているのでしょう。そのような社会の崩壊は目前に迫っています。
 おかしいことはおかしい、間違っていることは間違っているという。そして正しいことが通るようにしていかないと、広がるのは絶望だけです。
 皆さん大声で「Shame on you!」と叫びましょう。

(神山美智子)