Newsletter No.68
Newsletter No.68
2021 年3 月25 日
目 次
●アニマルウェルフェアと賄賂が歪めた国際基準
●「種苗への遺伝子操作の表示を求める署名」がスタート
●食の安全・監視委員会で広告チラシを独自調査 消費者だます“食品”広告、適正化まったなし
●ポカリスエット問題について当会の見解
●コメの検査・表示制度の規制緩和進む 未検査米も「産年・産地・品種」の表示可能に
●10年間の軌跡〜食品表示ネットの活動報告書まとまる
●食品と法律(39) 農薬の法規制4
●FSCW運営委員会報告
巻頭言
「何人分の死体があれば国連は行動してくれるのだろう」。ミャンマーの軍事クーデターに反対するデモ隊がかかげるプラカードのことばだそうです。同じことは香港でもウイグル自治区でも起きています。すべて中国が舵を握っています。
中国のこのような行動が、国際貿易や観光に与える経済的利益をも損ない、自国に不利益をもたらすことに気がつかないのでしょうか? 世界一の大国だとおごっているとしか思われません。中国の処世術の書「菜根譚」に「衰颯の景象は盛満の中にあり」ということばがあるそうです。
ところで3月1日に、福島地裁で「脱子ども被ばく裁判」の判決がありました。私も原告代理人に名前だけ連ねています。14人の中学生を含む約160人の原告は、子どもの通っている公立中学校では、被ばくの健康リスクがあるとして、安全な環境での教育を受ける権利があることを求める行政訴訟と、将来の健康不安に対する慰謝料10万円を求める国家賠償訴訟の2種類の訴えを起こしました。しかし、いずれも国や県の措置は不合理とはいえず違法とは言えないとして却下及び棄却という結論です。若干のリスクはあるものの、危険性の証明ができないということが理由です。予防原則に基づく判断が、裁判の中では確立していないのです。
子ども脱被ばく裁判では、「ニコニコしていれば放射能は怖くない」と講演した、福島県放射線健康リスク管理アドバイザー山下俊一氏に対する証人尋問も行われました。山下氏は「ことば足らず舌足らずで誤解を招いたとすれば、本当に申し訳ない」と証言しました。
それでも裁判所は、「積極的に誤解を与えようとする意図はうかがわれない」として県の責任を認めませんでした。
この裁判の前には、疎開を求める仮処分の申し立てもしましたが、無慈悲に却下されてしまいました。そのころ郡山であった集会に参加したとき、街の子どもたちがマスクもせず、太鼓を叩いてお祭りに参加していた光景に衝撃を受けました。ニコニコしていれば怖くないと言われているからでしょう!
一体いつまで、私たちは、命が粗末にされる世界に生きていかなくてはならないのでしょうか。
神山美智子(代表)