食品表示法第12条第1項(又は第2項)の規定に基づく申し出(サントリーウエルネス)
申出書
2021年6月8日
総理大臣 菅義偉 殿
食の安全・監視市民委員会
代表 神山美智子
食品表示法第12条第1項(又は第2項)の規定に基づき、下記のとおり、申し出ます。
記
一 申出人の氏名又は名称及び住所
名称 食の安全・監視市民委員会 神山美智子
住所 169-0051 東京都新宿区西早稲田1丁目9−19
二 申出に係る食品の種類(又は酒類の品目)
機能性表示食品 D191 サントリーウェルネス株式会社の「ロコモア」
三 申出の理由
当該商品は、科学的根拠を届出ることで機能性を表示できる「機能性表示食品」です。しかしその科学的根拠となっている臨床試験が、科学的に見て不適切であり、その結果、消費者は効果があると思わされ、高額な料金を払うという被害が起きています。
当該商品には、その機能性として「ひざ関節と脚の筋肉に働きかけ、加齢により衰えるひざ関節機能を維持すること、歩行機能の一部である日常生活における歩く速さを維持する」と表示して販売されています。
機能性の表示の科学的根拠となっているものは、当該商品の届出資料をみると、自社製品を対象とした自社研究所が実施に関与した臨床試験の論文です。その論文では、主要アウトカムと判断される被験者全員の100人を対象とした結果では「ひざ関節機能」についても「歩く速さ」についても、プラセボ群との統計的有意な差は出ていません。表示の根拠としては不適切なものです。
またこの論文は、自社の最終製品を用いた臨床試験ですので、機能性表示食品の届出制度としては、本来であれば「最終製品を用いた臨床試験」として届出すべきところです。
しかし肝心の論文の主要な結果では効果が確認されていないためか「機能性関与成分に関する研究レビュー」として届出されています。本来レビューとは、複数の研究を包括的に再検討する作業のことですが、当該企業が行ったレビューの対象は自社試験の1件のみで、それを自社の別の社員がレビューするという形で実施されています。そして試験の中のごく一部の肯定的な結果のみを恣意的に選出しています。
具体的には、被験者全体の解析では肯定的な結果が出ていないため、細かいグループに分けて、いわゆるグループ解析というやり方で検定を繰り返しています。その結果「ひざ関節機能」については、被験者を3回絞り込んでようやく試験途中の8週目にプラセボ群との統計的有意差が出ただけです。また「歩く速さ」でも、同様に対象者を4回も絞りに絞りこんで、最終的に16週目で差が出たというもの。
この間に66回検定を繰り返しています。2017年3月に出された消費者庁による「機能性表示食品制度での臨床試験の実態把握の検証・調査事業報告書」では、「有意差の基準を5%未満とすると、20回に1回は、本当は差が無いのにたまたま偶然差が出てしまう可能性がでてくる」と指摘されています。したがって一つの臨床試験で、比較の検定を20回以上繰り返して、たまたま差を見つけても、それは偶然の差と区別はつかないということになります。もう一度同じ臨床試験を実施したら、今度は全く別のところで有意差がつく可能性が高いわけです。
報告書では「今回のように数多くの副次的アウトカムを設定して、それから後付けのように有功などするロジックは科学的誤りであることを強調する」と述べられています。
「機能性表示食品に対する食品表示等関係法令に基づく事後的規制(事後チェック)の透明性の確保等に関する指針(事後チェック指針)」では、上記のような多重検定の問題ついては触れていませんが、当該資料3ページ目の(3)最終製品または機能性関与成分に関する研究レビュー、イ「研究レビューで採用した論文(臨床試験(ヒト試験)の内容(試験デザイン、試験方法、対象者、結果の評価等)について不備がある場合の【例】として示されている「・表示する機能性に見合ったアウトカムを適正に研究レビューに反映せず、肯定的な結果のみを恣意的に選出している場合」に該当する判断されます。
当該商品は、累計出荷本数800万本といも言われる大ヒット機能性表示食品ですが、このように本来求められる科学的根拠に明らかに不適切と判断される不備があるにもかかわらず、商品に機能性を表示して販売されることで、食品表示法第十二条にいう、「一般消費者の利益が害されている」と認められます。
適切な措置をお願いします。
四 申出に係る食品(又は酒類)に係る食品関連事業者等の氏名又は名称及び住所
氏名又は名称 サントリーウェルネス株式会社
住所 〒135-8631 東京都港区台場2丁目3番3号
五 申出に係る食品(又は酒類)の申出時における所在場所及び所有者の氏名又は名称
名称 サントリーウエルネスオンライン
住所 https://www.suntory-kenko.com/supplement/main/43344/
以上
食品表示法(平成25年法律第70号)(抜粋)
(内閣総理大臣等に対する申出)
第十二条 何人も、販売の用に供する食品(酒類を除く。以下この項において同じ。)に関する表示が適正でないため一般消費者の利
益が害されていると認めるときは、内閣府令・農林水産省令で定める手続に従い、その旨を内閣総理大臣又は農林水産大臣(当該食品に関する表示が適正でないことが第六条第一項の内閣府令・農林水産省令で定める表示事項又は遵守事項のみに係るものである場合にあっては、内閣総理大臣)に申し出て適切な措置をとるべきことを求めることができる。
2 何人も、販売の用に供する酒類に関する表示が適正でないため一般消費者の利益が害されていると認めるときは、内閣府令・財務
省令で定める手続に従い、その旨を内閣総理大臣又は財務大臣(当該酒類に関する表示が適正でないことが第六条第三項の内閣府令・財務省令で定める表示事項又は遵守事項のみに係るものである場合にあっては、内閣総理大臣)に申し出て適切な措置をとるべきことを求めることができる。
3 内閣総理大臣、農林水産大臣又は財務大臣は、前二項の規定による申出があった場合には、必要な調査を行い、その申出の内容が
事実であると認めるときは、第四条又は第六条の規定による措置その他の適切な措置をとらなければならない。