我が国における牛海綿状脳症(BSE)対策に係る食品健康影響評価(案)に関する 審議結果(案)についての意見
05FSCW第 2号
2005年4月27日
内閣府食品安全委員会事務局評価課内
「我が国における牛海綿状脳症(BSE)対策に係る食品健康影響評価(案)に関する審議結果」意見募集担当 御中
食の安全・監視市民委員会
代表 神山美智子
東京都新宿区早稲田町75日研ビル2階
TEL 03-5155-4765
我が国における牛海綿状脳症(BSE)対策に係る食品健康影響評価(案)に関する 審議結果(案)についての意見
(意見
本案の作成にあたっては私たちはかねがね拙速な答申を行うべきではないと申し入れておりましたが、以下のように問題のある答申案を公表したことは遺憾です。審議経過から判断すれば、論理的にみても、諮問に対しては「BSE検査は21ヶ月齢以上とすることなくこれまでの全頭での検査を継続すること」とすべきでした。
理由
1.今回の答申書の作成過程において「20ヶ月齢以下の牛をBSE検査から外しても全 頭検査を実施した場合と感染リスクは変わらない」との結論が前提とされる審議が行われた。
それは、貴専門委員会で、定量的評価ではデータ不足であることや各種の仮定に基づく評価しか行えない、という限界があるとみるや、定性的評価の手法を前面に出し(修正二次案05年3月11日)、若齢牛を外した検査と全頭検査を行った場合に、いずれも「無視できる~非常に低い」という評価レベルとされ、若齢牛を外しても結果は変 わらないのだ、という結論をなんとしても出そうとした。
これは科学的評価とはいえない。
2.このリスク評価においては、肉骨粉の禁止以降に生まれた弱齢牛のBSE発生を確認し た事実は、感染経路においてもさらなる検討が必要であることを示している。若齢牛を BSE検査から外すことはこうした検証を続けることに対しても障害となり、科学的提案とはいえない。これは政治的判断を優先させたとしか思えない。
3.BSE対策の評価においてはトレーサビリティ制度が全国で実施されていることが前提 であるが、耳標の付け替え事件が起きるなど、法令遵守も行われていない状況も考慮しなければならない。そうした事態を補完するためにも全頭での検査は必要である。
4.3月28日の答申書の「5おわりに」には、BSE検査の後退に慎重論を唱える委員の付帯意見も付けられた。すなわち、「生体牛でのBSEプリオン蓄積度に対する輸入配混合飼料の影響は不明であり、SRM除去の対策強化はこれからであること、20ヶ月齢以下をBSE検査から外すと弱齢牛での検査成績の評価ができなくなる、」と。
そうした意見が今後、リスク管理機関に対して効果的に作用する保障はなく、結果的 に今回の答申書は、玉虫色の表現をとりつつ国内のBSE対策を後退させるお墨付きを与えた。国内の各地のと畜場では全頭検査が今後も事実上続けられることから、国内対策は二重基準となるが、この政策の見直しは米国の牛肉の輸入再開を導くための法形式を整えた意味を持ち、政治的な決定に他ならない。
5.日本におけるvCJD患者の死亡という衝撃的な事実がある現在、BSEの発症メカニズム、vCJDの感染ルートなど未解明なまま、全頭検査の後退を認めることは消費者の不安を増大させる。データ不足を補う意味でも今後全頭検査を続け慎重なBSE対策を続けるべきである。
現在、BSE検査以外の、飼料規制、SRMの除去の徹底が全国的に完了していない。05年4月から始まった牛とそれ以外の動物の飼料分離、ピッシングの中止など各種のBSE対策の徹底後に改めて検査体制を検討すればよいのである。
今後、政治的に米国牛の輸入再開が始まれば、米国でのBSEのリスクが日本におけるvCJDのリスクの増大につながることになるが、それを食品安全委員会は座視することになり、今後その責任を問われることになろう。
6.プリオン病研究センターは2002年に発足したが、生体牛などを使用してBSEの感染や発症の仕組みを研究し始め、SRM以外の副腎などでもBSEプリオンを発見している。BSE検査法の進展もあり今後の若齢牛や生体牛でのBSE検査が期待されている。
食品安全委員会は、今回のパブリックヒアリングや今後行われるリスクコミュニケーションにおいては、全頭でのBSE検査を求める消費者の声を尊重し、今後も、と畜される牛の全頭でのBSE検査、死亡牛のBSE検査の徹底を図ることをリスク管理機関に勧告すべきである。
以上