消費者委員会は的外れの調査検討を繰り返すことを止め、申出に対する回答義務制度の導入にこそ力を注ぐべきです
23FSCW第1号
2023年6月1日
消費者委員会委員長 後藤巻則様
消費者委員会は的外れの調査検討を繰り返すことを止め、
申出に対する回答義務制度の導入にこそ力を注ぐべきです
食の安全・監視市民委員会
共同代表 佐野真理子 山浦康明
消費者委員会は、今年4月から、主に「消費者団体の政策提言機能の維持」を目標の一つに掲げ「消費者団体の実態調査」に取り組んでいます。消費者団体や有識者などからヒアリングを実施し、その調査結果に基づいて7月頃には課題と対応策を「成果物」としてまとめることを予定しています。5月25日現在まで2回のヒアリングを開き、6月頃には論点を整理するとのことです。
しかし、この調査については、消費者委員会が提示する調査の趣旨や調査の目的が極めてあいまいで、調査結果が得られたとしても、消費者目線からの実効性ある施策反映が期待できるかどうか、疑問と言わざるを得ません。消費者団体が取り組む消費者運動を消費者委員会がどう見ているかは、私たち「食の安全・監視市民委員会」の数度にわたる質問書や抗議書に対する同委員会の傍観的な回答で推測できます。私たちの公開質問に対する消費者委員会の回答はほぼ「木で鼻をくくる」無責任な内容で、とても真摯な回答とは思えないものばかりでした。
そのような自らの姿勢を省みないままの消費者団体実態調査は、同委員会のご都合主義を示すもので、前向きな検討とは思えません。消費者団体の「政策提言機能」を心配するのなら、消費者が求める情報の提供を保証し、それに基づく政策提言に対する「回答義務制度」の創設こそ、必要性が高いものです。
私たち食の安全・監視市民委員会はこれまでの活動と経験を踏まえ、次の通り、意見と要望を提起します。
記
1.消費者団体に対する消費者委員会の姿勢こそ反省を
「消費者団体の実態調査」の「目的」について消費者委員会は、「消費者団体が社会から期待される役割のうち、特に政策提言の機能に着目し、その機能が将来も維持されるよう」消費者団体の実態を調査し、「課題とその対応策を検討する」としています。
食の安全・監視市民委員会の政策提言の対象はほほ食品関連の行政機関ですが、その中には消費者委員会も含まれています。私たちはこれまで何度も消費者委員会に意見書や公開質問書を提出して政策提言をしてきたのですが、消費者委員会は真摯に回答しない姿勢で終始してきました。消費者団体の政策提言機能の維持を検討課題に据えるのなら、まず消費者委員会自らが消費者団体の質問に回答しなかったり、回答しても傍観的な回答で済ませたりしてきたこれまでの姿勢と理由を説明するべきでしょう。消費者団体の政策提言活動は、行政からの中身のある回答を得てこそ、維持・発展するものです。
2.的外れの調査の方向性、その見直しこそ必要です
消費者委員会は今回の調査の対象として、「地方公共団体(都道府県)と関わり・協力関係のある地方団体と、適格消費者団体、政府審議会に参加している全国団体を中心とする」としています。行政機関と協力関係にある団体、政府審議会に委員を派遣している全国団体が調査対象ということですが、これでは、あまりに権威主義的、非民主的です。また対象団体が偏っており、その範囲も狭く、「消費者団体の実態」を把握することなどとてもできません。そもそも、消費者運動を担う消費者団体には、「行政との協力関係」や「国や政府の審議会委員」などの関連性とは無縁な立場から運動に取り組んでいる団体が多いのが実情です。消費者委員会の視点は、納得できるものではありません。
3.消費者委員会は申出に対する回答義務制度の創設こそ提唱すべきです
消費者委員会による消費者団体の実態調査が「政策提言活動」の維持を検討目標の一つに置いているのなら、それは的外れの調査となります。そのような表面的な調査ではなく、「消費者団体による申出と行政の回答義務制度」創設の必要性を示す調査にこそ、取り組むべきです。この制度は2009年の消費者庁・消費者委員会設置時に国会でも必要性が議論になり、その後立ち消えとなりました。消費者の意見をきちんと受け止め、消費者の申出に対し行政機関が回答することを義務付けるものです。私たちは、この制度を消費者問題の改善と消費者団体の活性化に最も貢献する制度の一つと考えます。今からでも遅くはありません。消費者委員会は、現在の「消費者団体の実態調査」の方向性を抜本的に見直し、消費者の意見をきちんと行政に届け、それを政策に反映させる制度の導入に的を絞り、その必要性を示す調査活動にこそ取り組むことを要求します。
以上