消費者庁に意見書 機能性表示食品制度の廃止と実効性ある健康被害防止策を求めます

24FSCW第2号
2024年7月4日

消費者及び食品安全担当大臣 自見 英子様
厚生労働大臣        武見 敬三様
消費者庁長官        新井ゆたか様
消費者委員会委員長     鹿野菜穂子様

機能性表示食品制度の廃止と実効性ある健康被害防止策を求めます
~小手先の制度見直しでは事故は再発します~

              食の安全・監視市民委員会
共同代表 佐野真理子 山浦康明

 今年3月に発覚した死亡者を含む小林製薬の紅麹を利用したサプリメント事故を受け、政府は5月31日、機能性表示食品を対象に「健康被害の情報提供の義務化」と「機能性表示を行うサプリメント(錠剤・カプセル・粉末・液剤等の形状の食品)のGMPの義務化」という2つの義務化を柱とする「機能性表示食品制度等に関する今後の対応」を提示しました。現在、同「対応」の導入に向け、関係行政部局内で準備が進められています。
しかし、提示された「対応」内容を見ると、私たち消費者・市民団体が求めてきた機能性表示食品制度の廃止はもとより、消費者への情報提供・公表制度の導入、宣伝・広告規制の強化、食品の被害者救済制度の創設などは明確ではありません。機能性表示食品制度は「販売前の届出制度」「事業者の責任において表示する制度」という特徴を持ちますが、政府が示した「対応」は、この制度の根幹に全く触れることなく、目先の手直し、小手先の改善策で済まそうとしています。
制度見直しの契機となった「紅麹サプリメント事故」は、健康に良いと信じて食べた消費者に死亡者が出たという重大事故です。当初小林製薬の発表では死亡者5人でしたが、6月28日には、死亡者76人との報道もなされました。その中には本来機能性表示食品の対象者ではない疾病患者も含まれていることが示されました。病気罹患している消費者が摂食していた場合、危険な過剰摂取や医薬品との相乗作用が容易に考えられ、それは機能性表示食品全体に及ぶ、制度の根幹を揺るがす事態です。紅麹サプリメント以外の機能性表示食品でも同様の摂食例はあり、その健康被害例が大量に埋もれていることを推測させるものです。
紅麹サプリメント事故では原因物質はじめ事故原因が発覚して4カ月になろうとしている今でも、未だに事故の全体像は明らかになっていません。被害防止と被害救済の両面から、制度の廃止や、それに基づくサプリメント(錠剤・カプセル・粉末・液剤等の形状の食品)全般を対象にした適正な新しい規制法の制定、それらをもとにした施策導入などが行政には求められます。私たち食の安全・監視市民委員会は、紅麹サプリメント事故を、機能性食品だからこそ発生した重大な健康被害として捉え、能性表示食品制度について次のような改善策の導入を強く要求し、下記項目について回答を求めます。回答は7月24日までにいただきたく、よろしくお願いいたします。なお、回答は当会公式サイトに公開することを予めご了承ください。

1. 機能性表示食品制度の廃止を求めます

2. 医療機関との連携を整備してください
今回提示された国の施策では、健康被害の提供義務は「医師の診断によるものに限る」とされ、それを事業者が把握した場合に、因果関係が不明でも事業者は消費者庁及び都道府県等に情報提供することが義務となります。医療機関への適正な受診環境を整えていくためには行政・消費者生活センター・医療機関等との連携体制を整備する必要があります。診断の際、機能性関与成分、摂食量、関与成分と薬剤との相乗作用、個人間で異なる生活習慣の特異性など、体調不良を覚える消費者の訴えは幅広いものです。医療機関の受診受付について、消費者目線からの体制整備を求めます。

3. 健康被害事例について迅速に公表する制度の導入を明記すべきです
健康被害の情報提供義務は常に事故公表制度の導入とセットで検討すべきです。消費者に事故例を迅速に公表することこそが被害の拡大防止の決め手となります。被害情報の迅速な報告と同時に、消費者に迅速にしらせるべき公表に際しても目詰まりは許されません。

4. 事後チェック対象を拡大させるとともに、チェック結果を全面公表してください
提示された国の施策には、市販後対応の一環として「事後チェックのための買上げ事業の対象件数の拡充」も予定されています。しかし、ここにはチェック後の結果についてきちんと公表するのかどうか、明確ではありません。事後チェック事業の結果を全面開示して消費者に知らせない限り、事故防止への効果は期待できません。結果の全面公表・開示を求めます。

5. ネットCMを含む宣伝・広告も食品表示法の規制に含めるべきです
健康被害へとつながる広告について、食品表示法の対象にネットCMを含む宣伝・広告等を規制対象に位置付けるべきです。国の「対応」では、広告の適正化が相変わらず事業者の自主性に委ねられています。現在のままではデジタル社会の進展にもまったく対応できません。

6. 消費者救済制度の導入を求めます
60年代のカネミ油症事件以来、食品被害者救済は最大・最重要の事故対応です。早急に被害者救済制度導入への検討体制を整備して下さい。紅麹サプリメントによる被害増加が明らかになるに伴い、同種・同様の被害に対する救済制度の導入は喫緊の課題です。

7. 新しい規制法の導入検討に着手してください
消費者にとって、一見医薬品のようなサプリメント形状の保健機能食品およびその他の「いわゆる健康食品」を、食品と認識するのは難しいのが現状です。機能性表示食品としての届出品目だけを見ても、サプリメント形状の食品は約55%も占めています。これらが食品として販売されていること自体に問題が多く、医療機関を受診せず病気を悪化させる懸念もあります。
機能性表示食品制度の廃止とともに、サプリメント(錠剤・カプセル・粉末・液剤等の形状の食品)形状の食品全般を対象にした規制法制定に着手して下さい。

※ 国が示した機能性表示食品制度の見直しに向けた「今後の対応」には、「報告義務」はあっても「公表制度」がなく、「事後チェック対象の拡大」はあっても「チェック結果の開示」がないのは極めて不十分です。「消費者目線」が欠如した小手先の改善と思わざるを得ません。すくなくとも、上記の項目については行政が十分な検討に取り組むことを強く要望します。

以上

<連絡先> 食の安全・監視市民委員会
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