食の安全ウォッチNo.75(2022/12/27)

●キリントロピカーナ こっそり変わった包装・・・・・・・・・・・・2
●機能性表示食品検証資料公開訴訟 一部勝訴・・・3
●原料原産地表示について消費者庁が回答・・・・・・・・4
●講演会「農薬の人への健康影響」報告・・・・・・・・・・・5
●照射食品反対連絡会がブックレット発行・・・・7
●『食の安全と消費者の権利』のご案内・・・・・・8

巻頭言

審議不足の消費者被害防止と救済法
旧統一教会の被害者救済への新法が臨時国会で成立しました。年明けから順次施行されることになりました。この法律は国民生活センター法と消費者契約法の2法案改正と連携運用によって効果を発揮することが提唱されています。ただ、その実効性については、研究者、被害者、被害弁護団の三者で評価が大きく異なり、報道だけでは被害救済の決め手になるのか判断ができません。信者への高額寄付で被害を受けた親族が救済対象になるには、なお厳しい要件があるためです。
私が最も心配するのは、国民生活センター法の改正が十分な議論もなく、あまりに付け刃的に実施されたことです。同センターのADR(裁判外紛争処理手続)の強化と悪質事業者の社名公表などが法律に明記されたそうですが、そもそもADRでの審議は消費者と事業者双方の合意がなければ開始されません。
事業者名公表もその公表時期について、消費者庁長官が管轄する救済法と齟齬(そご)が生じる可能性があります。自民党国会議員の半数が旧統一教会と接点を持っていたこと、この事実からの幕引きにならないよう、今後もさらなる改正が必要でしょう。
3法は、効能効果を謳う健康食品の販売被害にあたっても大きな関連を持つ法制度となり得ますので。(佐野真理子)

消費者庁に猛省を求めます
消費者庁は2009年設置され、消費者保護のための司令塔となって各行政機関にまたがる案件について消費者の安全・安心を確保することになりました。食品については中国産冷凍餃子事件などがきっかけとなり、産地偽装食品、飼料米の食用米偽装問題などに対しても消費者の保護をはかることがその使命だったはずです。2015年には食品表示法もできました。しかし、その消費者庁の姿勢はこのところ消費者の選択権の確保といった消費者保護からかけはなれてしまっているようです。2022年4月、加工食品の原料原産地表示の完全施行がはじまりましたが、外国産原料を使った加工食品を日本で製造した場合、例えば「食パン原材料小麦粉(国内製造)」という表示でもよいとしました。これでは原料が本当はどこなのか消費者にわかりません。また、一番多く使った原料の原産地を表示するだけでもよい、としたのもその他の原料の素性がわからず問題です。
また、2023年4月からは「遺伝子組み換え(GM)でない」という表示のラベルが事実上使えなくなってしまいます。食品表示についての消費者庁の検討会で、消費者代表がGM食品かどうかをすぐにわかるようにしてほしいと要望したにもかかわらず、それは実現されず、逆に「分別流通管理している」などと略してGMの文字を隠すことになりました。そればかりか、「遺伝子組み換えでない」と事業者が任意で表示する際には、検出できない基準以下でないと認めない、などとして事実上「非GM表示」をさせないルールになってしまいました。これではGM食品を食べたくない消費者の選択権が保証されないばかりか、非GM原料で食品を作ろうとする良心的事業者を委縮させてしまいます。消費者庁は消費者の味方であることをもう一度思い出してもらいたいものです。(山浦康明)