意見書 「政府の事故米問題をめぐる対応は不十分です」

08FSCW第20号
2008日消連第42号
2009年1月16日
農林水産大臣 石破茂様
食の安全・監視市民委員会
代表 神山美智子
特定非営利活動法人日本消費者連盟
代表運営委員 富山洋子

意見書
「政府の事故米問題をめぐる対応は不十分です」

 農林水産省はMA(ミニマムアクセス)米の事故米から明らかになった諸問題に対し、汚染米の国内流通の実体調査報告、幹部職員への処分、米トレーサビリティ制度の検討、原料米原産地表示制度の検討などで、早急に事態の収拾をはかろうとしています。しかし、「事故米穀の不正規流通事案に関する対応策緊急取りまとめ」(2008年9月22日、事故米穀の不正規流通に関する対応検討チーム)の「今後の検討課題」(同取りまとめ6頁)に照らしても、未だ多くの問題が残っており、農水省幹部等の責任の取り方や、米流通システム、さらに根本的には貿易ルールを見直すなど、抜本的改革の必要があると思います。よって、以下に述べるようにさらに検討を続けることを求めます。
(1)行政責任の明確化、厳正な処分について
2008年12月24日開催の内閣府の「事故米に関する有識者会議」で報告された農水省幹部に対する処分の内容は、次官に対し給与の2割カット2ヶ月分が最高で、他の職員は訓告・口頭注意にとどまるなど極めて甘い処分でした。また汚染米問題が起きた当時、総合食料局長だった官房長が08年12月26日退職してしまうなど、責任者をはずし、責任の所在をわからなくさせる意図がみえます。米に対する安全性の信頼を失墜させた責任は重大です。関係者に対する、より厳しい処分を求めます。(2)米の流通・取引に関する検査体制の強化
汚染米の流通ルートの解明はまだすべて完了したわけではありません。08年10月31日、農水省は「流通ルートの解明状況の全体像」を公表しました。その中で、その8割を解明できた、としましたが、02年度以前に事業者に売却した事故米数量が未だ不明であり、加工用に売却された汚染米の行方についても、消費済みなどと無責任に推定しただけで事足れりとしています。さらに調査を進め、消費者に対する汚染のリスクをしっかりと評価すべきです。

(3)ミニマムアクセス(MA)米について
汚染米を含むMA米を年間76.7万トンも輸入し続けることが根本的な問題です。日本政府は輸入した小麦や食肉製品が事故品であった場合、輸入元へ積み戻しをしていますが、輸入した米は政府が事故米としてすべて税金を使って処理してきました。10月3日以降は事故米は焼却処分とすることとしましたが、これまで事故米が見つかってもMA米を律儀に輸入しつづけた理由は一体どういうことか、まったく腑に落ちません。財団法人日本穀物検定協会は輸入米検査によってどれだけの利得を得たか、他の検査機関に比較して検査内容、検査精度はどうであったか、MA米の横流しにより関係事業者はどのように不正利益を得、その額はどうかなど、徹底的に調査をすべきです。07年から08年にかけて世界食料危機が露わになり、これまでのWTOの貿易自由化論は破綻しました。日本がMA米を輸入することは世界の飢餓を招くことにもつながります。日本にとって不要で、世界にとっても無益有害なMA米の輸入は中止すべきです。

(4)米穀の流通システム全般の見直しについて
「米流通システム検討会」の「中間とりまとめ(08年11月27日)」では、現状の問題点をふまえ、検討の方向性として、米穀の制度全般の見直し、食品衛生上問題のある米穀を食用市場に流通させない仕組みの構築、米トレーサビリティの仕組みの確立などが提案されました。その提案において「事業者の自主的な取り組みが望ましい」との見解が述べられていますが、これまで事業者が行った不正行為の大きさに鑑みると、規制の手法を用いて、事業者に対する厳格なルールを策定する必要があります。
原料米原産地表示の実施のためにも、事業者に対し、情報伝達の義務づけ、違反した場合のペナルティ措置も必要です。

(5)不正取引を行う事業者に対する罰則の強化
食品偽装を根絶するために直罰による罰則の強化を行うべきです。

以上
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日本消費者連盟 山浦康明
Tel 03-5155-4765/Fax 03-5155-4767