1.まず、本評価に関する審議結果が、「100mSv未満の線量における放射線の健康影響については、疫学研究で健康影響がみられたとの報告はあるが、信頼のおけるデータと判断することは困難」との大前提に立って導かれたことに、異議がある。 放射線防護について保守的な立場をとっているICRPでさえも、100mSvの被曝は、がんの死亡率を0.5%程度上昇させるとしており、低線量域で被曝線量と健康被害の間に直線的な相関があることを認めている(ICRPパブリケーション99)。信頼のおける科学知見がないという理由で、100mSv未満の被曝を放置するとすれば、貴委員会は、私たち一人ひとりの健康を守る責任を放棄したことになる。低線量被曝に対しては、予防原則に基づいた防護措置を取るべきである。 一般公衆の許容限度は、ICRPの1985年のパリ声明を受けて、1989年4月から、それまでの5mSv(500ミリレム)から1mSvと見直されたが、これは、主として、広島・長崎の原爆線量の見直しと新たながん統計に基づく措置であった。そして、その後の調査を踏まえれば、1mSvでもまだ甘いとの指摘がある。2.更に、「生涯累積」という考え方にも異議がある。 放射線による影響が見い出されているのは、「通常の一般生活において受ける放射線量を除いた生涯における累積の実効線量」として、「100mSv以上」という判断は、単年での高い被曝をもたらす結果を招くことが危惧される。 放射線の被曝量を累積で括ることは、大人より子ども、子どもより胎児が感受性が強いという知見を度外視していると言える。子どもたち、若い人たちへの被曝はできるだけ避けるという観点に立てば、生涯累積という考え方は導かれない。 放射性物質の食品健康影響の評価は、年齢別に単年を単位として行われるべきである。 3.緊急時・平時を通じた生涯の暮らしの中で、外部被曝を受ける可能性は避け難いにも拘わらず、「外部被曝を含んでいるデータで検討したが、答申内容は食品による内部被曝の線量に限定」されていることには、納得できない。 受けることが予測される外部被曝を勘案した再評価が求められる。 フランスの放射能独立研究情報委員会(CRIIRAD)は、福島第1原発事故の汚染地域で、みずから測定した実測値に基づいて、福島市内に住む中学生の年間外部被曝線量が7~9mSvにのぼり得るとしている。 4.暫定規制値は、放射性ヨウ素、放射性セシウム、ウラン、プルトニウム及び超ウラン元素のアルファ核種に対してしか設定されていない。 ストロンチウム90や、コバルト60、あるいは、キセノンなど、福島第1原発から放出された放射性物質についての評価もきちんとなされるべきである。 とくに、放射能の雲が通過した際の放射性のガスや粉塵の吸引による内部被曝、空気中の放射能による外部被曝について、詳細なデータが示されていない。 5.前記のウラン、プルトニウムによる汚染について、検査体制が整備されていないのではないかとの危惧がある。 より厳しい評価がなされることを強く求めるが、併せて、検査体制の充実を図り、くまなくデータを取ることが必要である。 本評価書には、人々の健康を守るには、充分な測定器の購入及び測定者の配備等が大切であることを、きちんと盛り込むべきである。 6.放射線の身体への影響に関して、低線量被曝、内部被曝による晩発性障害は、がんや白血病のみならず、免疫系、神経系、循環器系等の、がん・白血病以外の疾患を含めた障害について、再評価を行うべきである。 7.放射線被曝による晩発性障害には、これ以下なら安全だという「閾値」はない。 放射性物質を取り込んだ内部被曝の場合は、量としては、わずかと考えられても、大きな被曝線量になり得るとの観点からの再評価を求める。 8.最後に、放射線による被曝の評価をされる際には、「予防原則」に立って、より厳しい数値を設定されることを強く求める。 私たちは上記を踏まえて、貴委員会対し「放射線被曝による影響が見い出されるのは、生涯累積100mSv以上」ということを大前提にした評価書を撤回され、放射線被曝による影響には「閾値」がないという知見及び予防原則に基づき、より厳しい評価を年齢別・単年毎に行われることを、強く求めます。 |