加工食品の原料原産地表示制度に関する意見

16FSCW第10号
2016年10月27日
消費者及び食品安全担当大臣 松本純様
消費者庁長官 岡村和美様
消費者委員会委員長 河上正二様
農林水産大臣 山本有二様
農林水産省消費・安全局長 今城健晴様
加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会座長 森光康次郎様
食の安全・監視市民委員会
代表 神山美智子
加工食品の原料原産地表示制度に関する意見
  2002年に「加工食品の原料原産地表示」が始まって以来、長年消費者がその拡大を求めてきた懸案の問題であるが現在まで22品目にとどまっている。
2015年11月、政府はTPP関連政策大綱に「加工食品の原料原産地表示の拡大」を盛り込み、全加工食品の原料原産地表示を政府に求める方針を閣議決定し、2016年1月29日に第1回「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会」が開催され、10月5日第9回を迎えた。

14年間の長きにわたり消費者の求める要求に遅々として応じなかったわけであるが、TPP批准にあたって政府の生産者の日本農業の衰退、消費者の食品の安全性に関する懸念の慰撫を目指す政策に呼応しての行政における検討であることは消費者行政の在り方として誠に残念に思う。

しかしながら今回、消費者としては全加工食品を対象に原料原産国表示の義務化について検討されることは長年の懸案事項が前進するものとして評価し期待していた。しかし終盤に近付いた第9回の案を見ると事業者の実行可能性が重視され、消費者の知りたい、理解して選択したいとする内容にはなっていない。

表示とは正確に内容が消費者に伝わり、消費者が選択するために役立つものでなければならないのは自明の理である。いわば売買に於ける契約内容なのであり、内容が不明なまま購入させることは事業者の驕りのなにものでもない。

国の政策の俎上に載せられた今こそ、消費者庁、農林水産省、検討会はあくまでも消費者の目線を其調に審議を進め、その真価を発揮すべき時である。以下具体的に意見を述べる。

1.現行の制度は廃止し、新しく上位3位まで表示すべきである
消費者とって二重規定は混乱の基である、従って現行の制度は廃止しすべきであり、その上で上位1位のみではなく3位まで表示すべきである。例えば35%、30%、30%との場合、1位と拮抗している30%が表示不要となり、原産地表示として不十分なものとなる。

2.「可能性表示」「大括り表示」は消費者の役に立たず、認められない
消費者が知りたいのはあくまでもその原料がどこの国の物かということである。検討会資料の例題として挙げられているカナダ又はアメリカ、国産又は輸入など消費者の選択に何の意味もない。事業者は原料国が頻繁に変わる、その度に包装を変更しなければならないのでコストがかかるといっているが、検討会には一部の製品を除いて、どのくらいの頻度で変わるか、容器包装の在庫との関係など納得のいく資料が提示されていない。確かに原産国が変更するであろうことは予想される。がその場合、必ずしも容器包装への印刷ではなく、包装の一括欄枠外へ、印字(期限表示に見るように)する方法などもあると思う。現在でもしばしば見られる。

3.中間加工品の原材料の原産国は事業者の責任で、確認すべきである
果実飲料など、すでに加工されたものを輸入、使用するのでその原産国は分からないとしているが、何処の物かわからないものを使用して製品を製造し販売するなど驚きとともに、事業者としての無責任性を露呈していることになる。食品衛生法による「食品等輸入届出書」には加工食品である時は原材料・コードを記入することになっている。トレースすれば確認できるはずである。
なお製造地を表示させるとしても、韓国において国内製造の場合、原材料の原産地を表示することになっているので、これを参考にして、案に示された例のような「パン、原材料名 小麦粉(国内製造)」に続き、小麦の生産国を記載させるべきだ。

4.のりの原産国はおにぎりだけではなく、拡大すべきである
おにぎりの海苔は原料の1位でないことは明らかなのになぜなぜ対象なのか、「案」にはその説明はない。のり事業者の要望が強いことは承知しており、是非対象としてもらいたいと思うが、その他海苔巻などもあり、明白な説明が必要である。

5.例外規程は制度の形骸化をもたらす
消費者は例外規程を認められているのと認められないものが、市場に混在すると、混乱をきたす。消費者が強くその表示を求めている油、醤油、味噌、食肉加工品などが例外規定となるならばそれらの加工食品に占める割合は多く、原産地表示制度そのものが形骸化したものとなってしまう。例外は事業者の自己申告なのか、過去の使用実績等の根拠となる書類の備置き等を必要することにはなっているが、その内容が妥当かどうかどうか、どう審査するかなど明白な基準が示されていない。厳正な審査のうえ、表示が不可能であると認められた場合は「原産国不明」の表示もあり得ると考える。現に遺伝子組み換え食品は「不分別(すなわち分別されていないのでわかりません)」の表示が認められている。

6.商品名を含み、冠表示、強調表示は、割合表示を義務付けるべきである
冠表示はガイドラインにより表示を普及するとしているが、商品名、冠表示、強調表示は消費者の選択に強いインパクトを与える。ガイドラインでは不十分であり、表示基準としパーセント表示を義務付けるべきである。

以上、事業者は不可能のみ強調することなく、IT機器等による情報管理の進歩した時代における、当事者としての自ら創意工夫による実行可能な方法の提案を期待したい。

なお、「案」に示されたマトリックス型二次元コード(QRコード)での表示を認める場合は、スーパーなどの店舗内にQRコードを読み取る装置及びユニバーサルデザインに対応したディスプレイのような表示装置等を設置させる必要がある。少なくとも強制的に、消費者に対し自らスマートフォンや携帯電話をかざしてコードを読み取るなどという行為をさせるべきでないことは明らかである。

以上

【連絡先】食の安全・監視市民委員会
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