ゼラノールに係る食品健康影響評価に関する審議結果(案)についての意見

ゼラノールに係る食品健康影響評価に関する審議結果(案)についての意見
2020年11月2日
食の安全・監視市民委員会
 評価書に書いてある各国の評価の違いを見ると、使用が禁止されているEUでは、「利用可能な情報はゼラノールを投与された動物由来の食肉及び食肉製品の消費者に対するリスクを定量的に推定するには不十分である」と結論付けている。使用が認められている米国、カナダ、豪州の間でも、ADIは、豪州が0.2μg/kg/dayに対して、米国が1.25μg/kg/dayと、6倍以上の開きがある。その中で、国内での承認、使用された実績がない日本の評価が、アメリカよりも高い値をADIとして設定することに違和感がある。

2001年の研究論文https://academic.oup.com/humrep/article/16/5/1037/2913512で、ゼラノールと17βエストラジオール、DES、ゲニステイン、ビスフェノールAなど内分泌かく乱化学物質との比較を行った研究がある。その論文では、ゼラノールはほかの内分泌かく乱化学物質と比較しても高いポテンシーを持っていることから、「牛肉を摂取することによるゼラノールは、その他の食品から検出される内分泌かく乱化学物質よりも大きな影響を与えうる。ヒトでの代謝などの情報が限られているため、ゼラノールが投与された家畜の肉を使用した製品を摂取した、人の血漿中のゼラノールの濃度の測定が緊急に必要である」と結論づけられている。
今回の食品安全委員会の審査でも、そのような人でのゼラノールの代謝の情報は入手されていない。だとすれば、情報が不十分であるため評価できないとしてリスク管理機関に答申するのも、妥当な判断であると考えられるが、いかがなものか。

リスク管理機関への要望はここではふさわしくないのかもしれないが、厚生労働省は、科学的不確実性をもとに、リスク管理するにあたっては、なぜ日本では使用実態のないゼラノールのADIを諮問しなければならないのかを、国民に説明するべきであり、それがアメリカからの輸入肉を止めないためであるのならば、その施策の妥当性は、国会で論議されるべき問題であろう。

以上